トランプが左派も保守も吹き飛ばしてしまった
米大統領選の共和党有力候補であるドナルド・トランプ氏がニューヨーク・タイムズのインタビューで日本と韓国の核武装を容認した。トランプ大統領が誕生するかどうかにかかわらず、核武装論はいまや日本が避けて通れない重要テーマになった。だが、日本で冷静に議論できるだろうか。
日本の安全保障をめぐる議論は、実は多くが「いざとなったら米国が日本を守ってくれる」というのが前提になっていた。リベラル左派は「米国が助けに来るのだから、日本は個別的自衛権で十分」といい、保守派は「米国の信頼をつなぎとめるためにも、集団的自衛権が必要」と主張してきた。
例外の1つは日本共産党だ。共産党は日米安保条約破棄の立場に立って「当面は自衛隊で守り、やがては自衛隊もいらない」と主張している。こう言うと「安保破棄も自衛隊廃止もいますぐにではない」という反論が返ってくるが、それは虎が猫の皮をかぶっているだけだ。国民を目眩まししているのである。
共産党の「米国に頼らない」という主張は、実は一部の右派とも共通している。違いは共産党が最終的に自衛隊不要論であるのに対して、一部の極右は日本の核武装を唱えている点だ。
上記の整理にしたがって言えば、私自身は保守派の立場に立つ。そのうえで自衛隊不要論は論外として、核武装論に対しては「日本の核武装に一番反対しているのは米国だ」という理屈を説明してきた。
たとえば、2015年7月31日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/premium01/44454)では「これ(日本の核武装)こそ米国が絶対に容認しない。米国は自分の手のひらに乗っている限りにおいて、日本の自衛隊を認めている。日本が核武装したら、日本が独り歩きしかねない。そんな事態は米国が全力で阻止するに違いないからだ」と書いている。
ところが、今回のトランプ発言はリベラル左派はもちろん保守派も吹き飛ばして、一挙に極右に味方するかのような内容になっている。
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