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障害を持つ人への差別を禁じた新法が今月から施行された。 障害者差別解…
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障害を持つ人への差別を禁じた新法が今月から施行された。
障害者差別解消法。2014年に批准した国連の障害者権利条約に合わせた法整備の一環だ。日常生活のさまざまな場面にかかわり、国民一人ひとりの意識と行動が問われる。誰もがお互いに尊重し支え合う社会への第一歩にしたい。
法律は国や自治体、民間事業者に対し障害を理由にした不当な差別的取り扱いを禁止した。障害者が直面する「壁」を取り除くための「合理的配慮」を行政機関に義務づけ、事業者も取り組みに努めるよう求めた。
例えば、車いすの利用者であることを理由にお店が入店を断れば、不当な差別的取り扱いにあたる。店にスロープを付けるなど車いすの人も使いやすくするのが合理的配慮だ。
耳が不自由な人との筆談、目が不自由な人への音読と、求められる配慮は多様だ。心臓病など見ただけではわかりにくい障害もある。援助や配慮が必要な人を示すマークの普及を急ぐなど、障害の特性に応じた細やかな対応や支援が大切になる。
合理的配慮は「負担が重すぎない範囲で」とされた。とりわけ、努力義務にとどまる民間事業者の対応がどこまで進むか、心配する声もある。
しかし、大がかりな施設の改修などをしなくてもやれることはあるはずだ。店の出入り口に段差があるなら、店員が手を貸すことで対応できる。前向きに支援する方法を考え、工夫する姿勢でのぞんでほしい。
障害者団体からは、個々の相談や救済にあたる新機関の設置を求める声もあったが、今回の法律には盛り込まれず、一部の自治体が条例で独自に設けるのにとどまっている。
相談事例を共有し、対策を話し合う地域協議会もつくることになっているが、設置は今年度前半までの見込み分を含めても全市町村の3割に満たない。
個別の相談にどう向き合い、具体的な解決につなげていくか。先行する自治体の取り組みも参考に、3年後の見直しに向けた議論に生かしてほしい。
対応を求められるのは行政機関や事業者だけではない。例えばスーパーでは、駐車場の障害者用スペースに対象外の人が車を止めている、との苦情がしばしば寄せられるという。一人ひとりの意識改革が不可欠だ。
障害を持つ人がどんなことで困っていて、どのような支援を求めているのか。対話を重ね、お互いに理解を深めていくことが、新たな制度を定着させ、育てていくことにつながる。
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