全車掌対象に「緊急停止訓練」実施へ
東京メトロ半蔵門線九段下駅(東京都千代田区)で4日、電車がベビーカーを挟んだまま発車した事故で、東京メトロは5日、全ての車掌を対象に、回送電車を使って非常ブレーキをかける緊急停止訓練を実施すると明らかにした。非常ボタンが押された場合は、必ず非常ブレーキをかけるよう徹底を図る。
東京メトロによると、入社後、車掌になるためにシミュレーターで非常ブレーキを使った緊急停止などの訓練を重ねる。その後、指導役と2人で乗務し、1人での乗務に切り替わる。1人乗務を始めた後は、決まった訓練は実施していない。
今回は乗客が非常ボタンを押し、ホームで警報音が鳴っていた。車掌(23)は警報音に気づいたが、緊急停止させるべき規則に反して電車を走行させた。入社2年目、単独での車掌業務は19日目で、「停止をためらった」と説明している。
電車にはドアに15ミリ以上の物が挟まるとセンサーが検知して発車できなくなるシステムがあるが、今回は細いパイプが挟まったため作動しなかった。同社は検知精度の向上について研究し、ホームドアの設置も進めていく方針だ。
東京メトロの奥義光社長は5日、国土交通省で石井啓一国交相と面会し、「一歩間違えれば大惨事になる事故で、お客さまに不安を与え、大変申し訳ない」と謝罪した。石井国交相は「出発時の監視業務は基本中の基本だ」と述べた。
同社によると、2011〜15年度の5年間に、乗客の服やカバンがドアに挟まれたまま電車が発車し、緊急停止した事例が4件あった。うち1件は乗客がホーム上で転倒し、顔に軽傷を負ったという。【内橋寿明】