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時制の続きとして、過去分詞を用いた現在完了形について説明します。本書では現在完了形という「時制」はないという立場をとっているので、現在形の一種として扱います。
haveの配下に過去の行為も含まれる
Taeko | Here, have some shaved ice. It’s nice and cool. |
Yamato | (Happily) Thank you! |
Tomo | Let’s eat! |
Taeko | If you eat it too fast, you’ll get a headache. |
Tomo | Oooh, my head. |
Taeko | What did I tell you? By the way, Yamato, I’ve heard that you live on your own. |
Yamato | Yes, doing the laundry and housework are more difficult than I imagined and if I am not careful, dirty clothes and garbage quickly pile up. |
From「A Summer in Kyoto」Story.1『The hot summer』 |
I have1)I’veを説明のためI haveに置き換えています heard that you live on your own.
例文にあるhaveとheardについて説明しましょう。
haveの基本イメージは「もっている」で、何かが主語の配下にある状態を表します。この配下には「具体的なモノ」だけでなく「抽象的なコト」も入ってきます。保有しているモノ、経験したコトなどの物事が配下にある状態を表すのがhaveです。
heardは動詞hearの過去分詞です。第5章で述べたように過去分詞の基本イメージは「過去の行為によってもたらされた完全な状態」でした。つまり、過去分詞heardは「過去のhearという行為によってもたらされた完全な状態」ということになります。
本文のイメージ図は次のようになりますが、主語Iは過去分詞heardに含まれている「過去の行為(矢印)」をもっていることに注目して下さい。
イメージ図のように「主語」が「過去分詞」をhaveしていると述べるときは、主語自身が過去の行為を行ったことになります。ここが「have+過去分詞」を理解するときのポイントです。訳すと「私は、(私が)聞いたことをもっている」となります。
「have+過去分詞」を文法では現在完了形と呼びます。しかしセットで理解するのではなく、haveと過去分詞がそれぞれもっている意味とイメージを捉えるようにしましょう。
日本語訳 | |
妙子 | かき氷どうぞ。ひやこいわよ。 |
大和 | (嬉しそうに)ありがとうございます! |
智一 | いただきまーす。 |
妙子 | ほんな慌てて食べると、頭、痛(いと)うなるわよ。 |
智一 | あいたたた、頭がキンキンする。 |
妙子 | もう、せやさかい言うたのに。せやせや、大和君は一人暮らししているんやってね。 |
大和 | はい。洗濯や掃除が、思っていたより大変で、油断をするとすぐに洗濯物やゴミが溜まってしまいます。 |
「京の都で過ごす夏」Story.1『京都の暑い夏』より |
haveは日本語訳に出てきにくい
Yamato | Hey, is there something wrong with my yukata? This is my first time to wear one. |
Kana | (Seeming disappointed) Forget about your yukata. What about mine? You haven’t complimented me yet. |
Tomo | (Flippantly) You both look just fine. |
Kana | You aren’t even looking at me! |
From「A Summer in Kyoto」Story.2『A night spent with the sounds of festival music』 |
You haven’t complimented me yet.
例文のイメージ図は次のようになります。過去分詞complimentedは「動詞complimented(ほめた)によってもたらされた完全な状態」を表します。
例文では主語Youは過去分詞complimentedをもっていないことが述べられています。あなたたちは「(あなたたちが)私をちゃんとほめた状態」をもっていないわけです。
これを訳すと「あなたたちはまだ私をほめていない」になります。このように日本語にすると、どうしてもhaveのニュアンスがわかりにくくなってしまいます。ここでもhave のイメージのまま英文を捉えることが大切なのです。
日本語訳 | |
大和 | なあ、俺の浴衣変じゃないかな? こういうの初めて着るんだけど。 |
加奈 | (不満げに)ちょっと大和の浴衣より、私のはどうなの? 全然ほめてもらってないけど? |
智一 | (適当に話を合わせて)2人ともよう似合ってるよ。 |
加奈 | もっとちゃんと見てよね! |
「京の都で過ごす夏」Story.2『お囃子の音色と過ごす夜』より |
haveは現在形である
Taeko | (Thinking) You know, I run a ryotei restaurant. Why don’t you have dinner here? |
Naomi | But it’s so sudden. Are you sure? |
Taeko | You’ve come all the way from Hokkaido. At least have some traditional Kyoto food before you go back. |
Naomi | Well, if it’s really no trouble. |
Taeko | This will give us a chance to talk. |
From「A Summer in Kyoto」Story.7『Mother comes to Kyoto』 |
You’ve come all the way from Hokkaido.
例文のイメージ図は次のようになります。過去分詞come は「動詞came(来た)によってもたらされた完全な状態」を表します。
主語Youは過去分詞comeをもっています。あなたは「(あなたが京都まで)来た状態」をもっているわけです。
「have+過去分詞」を理解するうえで重要なことは、haveは現在形であるということです。文法では現在完了形をひとつの「時制」として扱っているので、それが「presentのことを述べている」という感覚をもっていない人が多いと思います。しかしhaveは現在形なのでpresentに焦点が合っている表現なのです。
You’ve come… という妙子のセリフに対して、直美は「Well, if it’s really no trouble.」と現在形で返しています。2人ともpresentに焦点を合わせた話をしているわけです。聞こえるとおりにYou’ve (=You have) で現在のことだと捉える感覚が大切です。
この前の例文、I have heard that you live on your own. とYou haven’t complimented me yet. についても、文脈では現在の話をしていることを確認しておいて下さい。
日本語訳 | |
妙子 | (思いついて)そや、うちは、料亭やっとるんで、よかったら今晩食べていかれたらどないやろか? |
直美 | あら、よろしいんですか、急に? |
妙子 | せっかく遠く北海道からいらしたんやから、京都らしいもん食べていってくださいな。 |
直美 | そうね、じゃあ、お言葉に甘えようかしら。 |
妙子 | ゆるりとお話しいたしましょ。 |
「京の都で過ごす夏」Story.7『母が京都にやってきた』より |
beenはある期間ずっと何かと等しい状態を表す
Naomi | (Frustrated) Yamato, what is this mess? You still can’t seem to keep your room clean, can you? |
Yamato | I was planning on cleaning up later… |
Naomi | Look at these clothes you’ve worn, dumped on the floor. Nothing has changed from when you were in high school. |
Yamato | I know. I have been busy. |
From「A Summer in Kyoto」Story.7『Mother comes to Kyoto』 |
I have been busy.
例文のイメージ図は次のようになります。過去分詞beenは「be動詞wasによってもたらされた完全な状態」を表しています。
この英文はイメージをみてもイマイチよくわからないと思います。そこで体を使ってイメージを深めてみましょう。
- 1.Iと言って、自分の胸に手をあてます。
- 2.haveと言って、前方に風呂敷を広げます。
- 3.beenと言って、風呂敷の上で手を前方に向けていきます。その間ずっと何かに等しいと思いながら行います。
- 4.そのままマルッと手を回して固まりをつくります。
- 5.busyと言って、この固まりとbusyを結びつけます。
beenの基本イメージは「ある期間ずっと何かに等しい状態」となります。そしてbusyと述べることで、この状態とbusyを結びつけて、ずっと忙しかった状態を表現します。
have been busyはそのような「ずっと忙しかった状態」をいまもっているというニュアンスになります。こうして「いままでずっと忙しかった(いまも忙しい)」という意味になるわけです。
日本語訳 | |
直美 | (あきれて)ちょっと大和、何この、汚い部屋は? 相変らず掃除をしないわね。 |
大和 | 後でしようと思ってたんだよ……。 |
直美 | 脱いだ服は脱ぎっぱなし。全然高校生のときと変わってないじゃない。 |
大和 | わかってるよ。忙しかったんだよ。 |
「京の都で過ごす夏」Story.7『母が京都にやってきた』より |
いままで4つの例文をみてきましたが、文法ではこれらを現在完了形の4つの用法として扱っています。
I have heard that you live on your own.(経験)
You haven’t complimented me yet.(完了)
You’ve come all the way from Hokkaido.(結果)
I have been busy.(継続)
しかし、こういう分類は英会話ではあまり役に立つものではありません。「経験について話をしたいから現在完了形を使おう」というようには普通は考えないからです。実践の場で使いこなすためにも、haveに過去分詞を加えるといった単語の流れそのままで理解していただきたいと思います。
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References
1. | ↑ | I’veを説明のためI haveに置き換えています |