Financial Times

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

[FT]トランプ氏の大敗は当然(社説)

2016/4/7 14:45
小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
保存
印刷
リプリント
共有

Financial Times

 米国ウィスコンシン州で投票した人たちは感謝されてしかるべきだ。米大統領選で共和党の指名候補者争いの流れが変わった、もしくはドナルド・トランプ氏の欠点が完全に露呈した、と言うには時期尚早だ。欠点はずっと前から明らかだったに違いない。しかし、トランプ氏がテッド・クルーズ氏に敗北したことで、投票者がようやくトランプ氏の欠点に気がつき始めたのかもしれないというかすかな希望が見える。

ウィスコンシン州を訪れたトランプ氏。5日に行われた同州の予備選で敗北した=ロイター
画像の拡大

ウィスコンシン州を訪れたトランプ氏。5日に行われた同州の予備選で敗北した=ロイター

 クルーズ氏が、上を行くトランプ氏の代議員獲得数を超えるには、今後数週間の一連の予備選・党員集会でありえないような結果が必要になる。たとえクルーズ氏が指名を獲得した場合でも、共和党が政権を奪還できる期待を高めるわけではないだろう。しかし、トランプ氏は常識が通用しない候補者だ。共和党のこの分裂状態が続けば続くほど、投票する人々は一段と「トランプ大統領」が何を意味するのか理解するようになるだろう。そのような姿は見られたものではない。

 トランプ氏はいつも通り、過去2週間で次々に失言を連発し、まさにその証拠を自ら提供している。同氏は、自身の妻メラニアさんと対立候補クルーズ氏の妻ハイディさんの容姿を比べてけなし、さらに大勢の女性を敵に回すような挑発をした。ただし、この件は同時に、「ナイスガイ」ではないクルーズ氏が人間味あふれるメッセージを送る「チャンス」にもなった。

 トランプ氏は同様に、中絶した女性が処罰を受けるべきだと主張し(すぐに発言を撤回したが)最も強硬な中絶反対派からも激しい怒りを買った。このことで、トランプ氏は場当たりで物事をでっち上げているという印象を強めた。同様のことは、トランプ氏が日本と韓国に対して核の抑止力を自ら開発すべきだと発言したことにも当てはまる。この発言で日本政府と韓国政府から異例の非難が起きた。さらに、トランプ氏は大統領になったあかつきには北大西洋条約機構(NATO)から脱退すると脅しをかけた。挙げたら切りがない。

■ニューヨーク州で勝利する可能性は高い

 とはいえ、トランプ氏がこれらの疑いを払いのけ、今月後半に行われるさらに重要なニューヨーク州の予備選で勝利する可能性はかなり高い。共和党の投票者の大部分は、大統領選でのトランプ氏の弱点を意に介しておらず、トランプ氏に投票することで共和党主流派に露骨なメッセージを送るつもりなのだ。

 また、トランプ氏が最多代議員数を獲得して7月の共和党全国大会にトップで突入する可能性もあるだろう。しかし、ウィスコンシン州での結果はトランプ氏の持つ2つの最大の脆弱性を露呈した。まず、クルーズ陣営は組織としてトランプ陣営のはるか先を行く。これは、いかに多くの代議員を獲得できるかがものを言う地方の政党支部に選挙戦が一段と広がった時に、大きな差を生む可能性がある。選挙戦は地方を巡る消耗戦に突入しており、クルーズ氏は強みを発揮できる。

 2つ目は、米国のメディアが攻撃の手ぐすねを引き始めた点だ。米国メディアはトランプ氏に無料で放送時間を与えすぎたと痛烈に批判され(ある推計によるとおよそ20億ドルに相当する)、テレビ界はその修正を図ろうと躍起になっている。トランプ氏の知名度は依然として多くの注目を集めるが、テレビ局の幹部はトランプ氏が落ち目になっても人をさらに引きつけるだろうと気づき始めている。トランプ氏が繰り返し中傷する米フォックス・ニュースのキャスター、メギン・ケリー氏の人気は上昇している。メディアという剣で生きてきたトランプ氏は、その剣で命を落とすかもしれない。

 少なくともそれが反トランプ派の希望だが、現実はまだ混沌としそうだ。ほぼ確実に、7月、共和党の全国党大会で指名争いがもつれこむことに直面するだろう。

 トランプ氏がおよそ1年前に突如姿を現した時、同氏の支持率は社会通念上、一時的なものだと片付けられていた。しかし、誰もが想像した以上にそれは長く続いた。共和党の大多数はトランプ氏の指名に反対し続けるだろう。みんながいまからこの流れに続いても決して遅くはない。

(2016年4月7日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.


人気記事をまとめてチェック

「ビジネスリーダー」の週刊メールマガジン無料配信中
「ビジネスリーダー」のツイッターアカウントを開設しました。
GlobalEnglish日経版

GlobalEnglish 日経版

世界を目指す、全てのビジネスパーソンに。 ビジネス英語をレベルごとに学べるオンライン学習プログラム。日経新聞と英FT紙の最新の記事を教材に活用、時事英語もバランス良く学べます。

詳しくはこちらから

Financial TimesをMyニュースでまとめ読み
フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
保存
印刷
リプリント
共有

電子版トップビジネスリーダートップ

【PR】

【PR】

Financial Times 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

中国河北省で収穫されたトウモロコシ。肥料の価格は急落している=ロイター

ロイター

[FT]肥料価格下落でM&Aは不作に

 米国の農家は農産物価格の低迷と所得の減少に苦しんでいるが、少なくともコストの低下にいくらかの慰めを見いだせる。
 昔から農業の非固定費の最大部分を占める肥料の価格がこの1年で大きく下がり、経営難の農家…続き (4/7)

ウィスコンシン州を訪れたトランプ氏。5日に行われた同州の予備選で敗北した=ロイター

ロイター

[FT]トランプ氏の大敗は当然(社説)

 米国ウィスコンシン州で投票した人たちは感謝されてしかるべきだ。米大統領選で共和党の指名候補者争いの流れが変わった、もしくはドナルド・トランプ氏の欠点が完全に露呈した、と言うには時期尚早だ。欠点はずっ…続き (4/7)

法律事務所モサック・フォンセカのウェブサイト=ロイター

ロイター

[FT]「パナマ文書」で疑わしい関係持つ銀行に厳しい目

 世界的に著名な人物――国家元首から一流スポーツ選手、エンターテイナーまで――が何十億ドルもの資金をオフショア(注:自国外を指す。ここでは租税回避地の意)へ移すのにパナマのある法律事務所が手を貸した際…続き (4/7)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

リーダーのネタ帳

[PR]