ストレスで急に仕事に行けなくなった人、いますか?
最近職場に復帰した人から、長期休暇に入るきっかけを聞いた。「ある朝起きたら急に体が動かなくなった。まるで自分の体じゃないみたいで驚いた」のだという。
これを聞いて僕はフランツ・カフカ『変身』を思い浮かべた。
《目次》
実存主義文学
カフカは「実存主義文学」に分類され、その筋の先駆者だといわれている。
実存主義とは簡単にいえば「周りとか原則はどうだって関係ねえ!自分にとっての真実が大事だ」派のこと。これをベースに『変身』を読むと、一層面白い。
実存主義的なこと書いた記事がこれ(もっと読まれてほしい)。
【世界十五大哲学:大井正/寺沢恒信】イチかゼロか、それが問題だ - 引用書店
「体が動かない物語」のはじまりと終わり
ある朝、グレーゴル・ザムザがなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な虫に変わっているのを発見した。
『変身』最初の文だ。驚きとともに朝目覚めたときが終わりのはじまり。
外交販売という仕事での「旅の苦労」、両親をはじめ家族を養うストレスが限界にきたのか、物語はグレーゴルが朝起きて「一匹の巨大な虫に変わっている」ところからはじまる。
豹変したグレーゴルに周りは冷たくあたり、 最後は腐ったリンゴを背中にめり込ませたまま息絶えていく。
なぜ「うつ」で朝起きれなくなるのか
うつの代表的な初期症状として「夜眠れなくなること」があげられる。
当然、朝起きるのがツラくなる。これを繰り返しているうちに、ついに「ある朝起きたら急に体が動かなくなった」という状況に至るそうだ。
脳内の神経伝達物質(ドパミンとかノルアドレナリンとかセロトニンとか)に異常をきたした状態が「うつ」なのだが、そこに至るまでの原因は人ぞれぞれで、ストレスがどのように神経伝達物質に影響を与えるか科学的なメカニズムは分かっていない。
「うつ」後の昼夜逆転はアリ?
ただし、「うつ」で療養生活に入ったあとの昼夜逆転は自己防御策の一つで、否定すべきものではないという精神科医による説もある。
「昼夜逆転」現象のナゾ――なぜ「ウツ」の人は朝起きられなくなるのか? ――「うつ」にまつわる誤解 その(7)|男の健康|ダイヤモンド・オンライン
ただでさえ「うつ」によって無力感を感じ自己否定的な気分があるところに、日中起きていて、状況的にも世の中に取り残されたような感じがしたり、自分が無価値な感じを抱いたりしやすいことは、想像に難くありません。
グレーゴルのようにリンゴは背中に刺さってなくても自室から出られずに苦しんでいる方は結構いるとおもう。
人はツラい状態に陥ると「それが永遠に続く」と思いがちだが、そんなことはない。ゆっくり自分のペースで生活のリズムを戻していって、社会復帰してほしい。