政府内に真意いぶかる声
沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事が、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設を巡る訴訟で敗訴した場合、「埋め立て承認の撤回も視野に入れる」と発言したことに、政府内で6日、真意をいぶかる声が上がった。政府は先月、福岡高裁那覇支部が示した和解案を受け入れ、移設工事を中断して県との協議を開始。政府高官は「和解に基づく協議と司法のプロセスが始まったばかりだ」と不快感を示した。
翁長氏は5日の毎日新聞のインタビューで「承認以降の事由(出来事)で私どもが了解できないことがあれば、撤回も視野に入れる」と述べた。新たな訴訟で敗訴した場合、辺野古埋め立て承認を「取り消す」のではなく、承認後に起きた理由により「撤回」する考えを示唆した。
ただ、防衛省幹部は「具体的にどう撤回するのか理解できない。政府側でこの発言に対し何か対応を協議することはないだろう」と突き放した。
別の政府関係者は「翁長氏はどんどん先に進もうとしている印象だ。何かを言い続けないと求心力を保てないのではないか」と語り、政府側が予想に反して和解協議に応じたことから、翁長氏側に焦りが見られるとの見解を示した。
政府と県が合意した和解条項に基づき、両者は円満解決に向けた協議を進める一方、翁長氏の承認取り消しの是非について、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」を経て、司法の判断をあおぐ運びとなっている。高裁判決は早ければ8月。いずれが敗訴しても上訴する方針で、最高裁の判断は来年1〜2月に示される見通しだ。
政府側は、この司法判断を「最終決着」と捉え、その後は県が移設に協力する方向に転換することを期待している。しかし、県側が最高裁判決後も移設阻止の姿勢を崩さなければ、さらに計画が遅れる可能性が出てくる。【高本耕太、村尾哲】