悲惨な事故STOP! 望まれる通学路への拡大
通学路や生活道路で歩行者が被害に遭う事故が相次ぐ中、新潟市が車道上に昇降式の車止め「ライジングボラード」を設けて車の進入を規制する全国初の社会実験を行い、成果を上げています。欧州では普及している規制方法ですが、国内の公道での実施は初めてのこと。京都府亀岡市で集団登校中の児童ら10人が死傷した事故から、今月23日で2年を迎えますが、悲惨な事故がこれ以上起こらないよう、社会実験を担当した有識者も通学路にボラードを設置するよう求めています。【馬場直子/デジタル報道センター】
実験は昨年10月〜今年2月、新潟市中央区の商店街「古町モール6」で行われました。モール内は一方通行で、人通りが増える正午から翌日の午前8時まで車の通行は禁止です。しかし、違反を無視して通り抜ける車が後を絶たず、歩行者から改善を求める声が上がっていました。
英語でボラードは元々、岸壁で船を係留する杭(くい)で、車止めの意味でも使われます。ライジングボラードは高さ71センチ、直径8センチの円柱で、道の中央部に埋め込み、手動または自動で上下します。本場の欧州では金属製が一般的ですが、無理に進入しようとした車がぶつかって車体が壊れる例も多く、問題になっています。このため新潟市は、ライジングボラードの素材を柔らかいウレタンゴム製に変え、無理に通った場合はライジングボラードが倒れる仕組みにしました。
モールの入り口に1本設置し、通行禁止の時間帯にライジングボラードが現れ、車の進入を阻みます。救急車など緊急車両が通る場合はセンサー横のボタンを押せば下がります。
4カ月余の社会実験により、効果がはっきりと証明されました。実験開始前には、規制に違反して進入する車は1週間に119台でしたが、開始直後は強引に進入するなどした39台に激減しました。さらに、設置2カ月後は同2台にまで減りました。市が行ったアンケートでは、歩行者や通行車両の6割近くが設置の継続を望み、市内の別地域での実施を求める声も半数を超えました。
通学路や生活道路では、重大事故が多発しています。3年前の2011年4月には、栃木県鹿沼市で登校中の小学生の列にクレーン車が突っ込み、児童6人が亡くなりました。子どもと高齢者の事故防止を重点テーマとした今春の全国交通安全運動期間中でも、茨城県神栖市と静岡県沼津市で小学生計2人が登下校中に車にはねられて死亡する事故がありました。
全国の警察は運動期間中の9日、通学路約3000カ所で一斉に交通違反を取り締まりました。警察庁によると、計1万2759件の違反を検挙し、最も多くを占めたのが進入禁止の道路を通行する通行禁止違反の6682件でした。
新潟市の篠田昭市長(65)は「歩行者が車を心配せず、にぎわいを味わえる街にしようと考え、実験を始めました」と説明。「実験の結果、違反車は激減しました。ライジングボラードの常設を目指し、通学路にも拡大したいと思います」と話しています。
社会実験を担当した久保田尚・埼玉大大学院教授(都市交通計画)は、最大の問題として、通学路などを抜け道に利用する車の存在を挙げ、「通学路は子どもの安全を守るべきなのに、抜け道として使われれば、車の速度も速くなり、子どもの命が危険にさらされます」と指摘します。その上で、「車の進入を物理的に抑制できるボラードの設置を通学路で進めることは、犠牲者を減らすのに大変有効だと思います」と説明しています。