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 学生注目! 何だ! 文系の学問は役に立たないから廃止しろなんてことが言われている! ナンセンス! 我々は先輩の教えを聞いて、断固文系で学ばねばならない! 異議なし!

■「ムダあって人は作られる」 最果タヒさん・詩人

 阪神大震災が起きた1995年。私が9歳だった時の話をしますね。

 阪神、淡路を襲った巨大地震で高速道路も高層ビルも見事に壊れ、街の機能はマヒしました。神戸市内の自宅も半壊し、しばらく避難所で暮らしました。そこで、おじいちゃんたちが青空の下で将棋を教えてくれたんです。おなかが満たされたわけではないし、その後、何かに役立ったわけでもない。でも、ひととき笑顔になれて、心が満たされた。人間って、そういう時間も必要なんじゃないかな、と思います。

 高速道路や高層ビルは、確かに便利で生活に欠かせないものです。私がおじいちゃんに習った将棋は、少なくとも私の人生に欠かせないものではない。でも、役に立つものだけでは生きていけないんだということを、青空将棋から無意識のうちに学んだのかもしれません。

 もしかして大学で、特に文系の学部で学ぶことなんか、社会で何の役にも立たないよ、なんて考えていませんか。