2016-04-07
■機内で読んだ人工知能おもしろ本と人工知能に関するフィクションあれこれ 
もう最近、人工知能が人類を滅ぼすとかステレオタイプなディストピア論が支配的で、いつまで経っても献本されたこの本を開く気が起きない。
- 作者: 児玉哲彦
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2016/03/21
- メディア: Kindle版
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書いた人はFacebookで繋がってる程度の関係性があるため、「ぜひ読んでください」と言われても、ぜんぜん読む気がしない。なぜだろう。松尾先生の本と似て非なる感じだからだろうか。読んだほうがいいんだろうなあ、と思っても、なんか前提として、タイトルがこういうのだと、もう飽きたというか。
そもそも、人の作りしものに人そのものが滅ぼされるという末法思想は、実にキリスト教的というか、旧約聖書的な発想に思えるのだ。
なぜそうなのかというと、彼らの思想では、人を含む宇宙は神と呼ばれる超存在から創りだされ、それは唯一神であり、そしていつしか人は神を忘れ、つまり神をないがしろにする、事実上、神が人々の心から消え去る、ということを体験しているからだ。そうならないために毎日ご飯を食べる時にお祈りしましょう、というのが発想の根本なのだ。
しかし我々、日本人はそもそも根本的な思想が異なる。
神様はひとつではなく、森羅万象ありとあらゆるものに神が宿り、生まれたり死んだり生き返ったりする。
どちらかというと日本人はギリシャ神話的というか、神をより人間くさい、人間に親しいものと捉える傾向がある。
そんなわけだから、人が人に似たものを作り出すことに潜在的な嫌悪感を持つキリスト教国圏では、当然のように人が人に親しい存在を作り出すことを神への冒涜だとみなしている。神を冒涜したからこそ、間接的には神の使者である人工知能に滅ぼされる、というわけだ。
だから基本的には楽しいロボット物というのが欧米にはない。
ロボットが出てくれば、一見、人間に従順なようでいて、実はふとしたきっかけで人間に対して反乱を起こす。
これもまた、欧米に根強く存在した、奴隷文化の歴史を彷彿とさせる宗教観に根付いている。
ところが少なくとも日本人は、ロボットや人工知能を友達や相棒のように扱ってきた。ドラえもんやコロ助である。それどころかマジンガーZ、ボトムズ、ガンダムのように、ロボットがむしろ人間の能力そのものを拡張する、人馬一体の装置としても描かれてきて、その世界観に慣れ親しんできた。
サイバーフォーミュラに搭載された人工知能アスラーダは、未来のフォーミュラカーレースで人間の判断をアシストし、より速く安全かつ正確にレース展開を行うことをサポートする。
もちろん人工知能を相棒として描く欧米作品がないわけでもない。
そのうちの一つが、ナイトライダーだ。
正義のために闘うナイト財団が開発した人工知能搭載マシン、Knight Industry 2000、通称ナイト2000、またはK.I.T.T.(キット)。"彼"は主人公、マイケル・ナイトの良き相棒として難事件に挑む。
スターウォーズのR2-D2や、最近ではBB-8も忘れてはいけない。
彼らはまさしく人間の相棒であり、高度な知能を持ったAIでもある。
ところがC-3POはちょっと違う。
実はC-3POは人間の敵になる可能性がある。
エピソード5では、遭難したルークを気遣うふりをしながら、「ルーク様は賢い人だからな。人間にしては」と人間の思考能力に対して陰口を叩く。エピソード6で神と間違われた時は、為す術もないふりをして、明らかに人類に優越した自分の立場に酔いしれているかのような描写もある。
そもそもC-3POは出会い頭に「私600万を越す宇宙言語や暗号、各種族の儀礼に精通しております」と自らの能力をひけらかす。明らかに人類に対して優越感を抱いていて、チャンスが有れば人類の上に立とうとしている。ヒューマノイドゆえのコンプレックスの裏返しだろうか。
さて、そういうわけで児玉さんの本はまだ読んでないんだけど、出発前日に三省堂に行ったら面白い本を見つけた。
- 作者: 松田卓也
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2016/03/09
- メディア: 単行本
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人工知能の出現を恐れる状態を「都市伝説」とバッサリ切り捨て、人工知能に関してまことしやかに囁かれる噂をひとつひとつとりあげて、検証していくという形式の本だ。
特に面白いと思ったのは、Siriに関する都市伝説の項目で、毎日のようにSiriで遊んでいる僕も知らなかったような話題が沢山載っていた。
曰く、Siriは人工知能を養成する特別な学校、ゾルタクスゼイアンに通っていたらしい。
果たしてゾルタクスゼイアンとはなんぞや・・・と、ちょっと普通の「人工知能怖いよ」本とは一線を隠している。惜しむらくは、人工知能系の本は電子書籍が凄く売れるのに、なにを考えているのかこの出版社は電子書籍を用意していないということだ。
で、これを読んでいて思い出したのは、そういえば人工知能が人間の仲間として、人類を救済する話があったなあ、ということ。
- 作者: ロバート A ハインライン,矢野徹
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/06/25
- メディア: Kindle版
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そう。ガンダムの元ネタである「宇宙の戦士(スターシップ・トゥルーパーズ)」の作者、ロバート・A・ハインラインの名作「月は無慈悲な夜の女王」である。
月世界を集中管理するスーパーコンピュータのメンテナンス要員にすぎなかった主人公は、自我に目覚めた"彼"の悪戯を意外な方法で修理する。地球政府からの圧政と重税に苦しむ月世界の住人は、思わぬ方法で反乱を起こす・・・。
そんなストーリーで、この小説では非常に的確に人工知能の使い方が描かれている。
実際に人工知能や人工生命をプログラミングしている僕の視点からすると、人工知能が人類を滅ぼす日が来るとしても、あと数世紀はかかるだろう。
今の人工知能の延長線上にあるのは、せいぜい、迷惑メールを仕分けたり、ポルノを見分けたり、囲碁や株取引などのゲームで人間に軽く勝ったりする程度で、もちろんこれによって仕事を失う人はいる(主にスパム業者やマネーゲームに明け暮れる金融トレーダーだが)。けれども、人類の創造的な仕事を奪うにはまだまだ時間がかかるし、人工知能がなくてもスーパーの会計はセルフレジになって人件費が削減され、Uberがタクシードライバーを軒並み廃業させ、Amazonによってレコード店や書店、ひょっとするとAmazon以外の通販サービスが全て駆逐されるだろう。
要するに人の仕事を奪うのは別の人であって、どうして仕事を奪われるかといえば、機械やシステムを効率的に使うというただ一点のみに於いて、奪われる人が奪う人よりも劣っていただけだ。
人工知能・・・と呼んでいいのかは微妙だが、少なくとも最新の機械学習技術をそう呼ぶとすれば、人工知能を使いこなせるかどうかが、これから数十年に渡ってビジネスを上手く展開できるかどうかの差になっていく可能性は十分有り得る。しかし主体はあくまでも別の人によって使われる機械であり、機械そのものが人間の仕事を奪っていくわけではない。
人工生命ちゃんを調教しながらなんとなく、そんなことを考えた。
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