無料対話アプリのLINE(東京・渋谷)は6日、スマートフォン(スマホ)ゲーム内のアイテムを巡り、供託金が必要な「通貨」に当たるかどうか、関東財務局と協議を進めていると発表した。LINEは供託金がいらないと主張。必要と認定されても、財務面での負担は少ないとみている。ただ、稼ぎ頭のゲームに降りかかった争点は、企業戦略にも影響を与えそうだ。
今回問題になっているのはダウンロード数が5000万に達するゲーム「LINE POP」で使う「宝箱の鍵」というアイテム。これが資金決済法で供託金が必要とされる「前払い式支払手段」にあたるかが焦点になっている。
資金決済法では、(1)金額や数量が電子的な方法を含め記録されている(2)それに応じる対価を得ている(3)物品の購入やサービスの利用に使える――という要件をすべて満たすものを前払い式支払手段とする。発行会社の破綻から利用者を守るために、年2回の基準日時点での未使用の残高が1千万円を超える場合、半分を法務局などに供託することを義務付けている。
宝箱の鍵はゲーム中に獲得できるほか、ほかのLINEのゲームでも使える共通通貨「ルビー」で購入できる。鍵を利用することでゲームを優位に進めるキャラクターを手に入れたり、キャラクターの能力を引き上げたりすることが可能だ。
当局は前払い式手段とみるのに対し、LINEの見解は違う。理由を明確にしていないが、POPというゲーム内でしかも特定の用途しかないため(3)を満たしておらず、ゲーム中に獲得できるため(2)にも当てはまらないと考えているようだ。
2015年7月に鍵の仕様を変更し一部の機能は使えないようにした。「変更前でも該当しないと判断していたが、基準が明確でないためより限定した」(同社)
ゲームのアイテムについては、どれが供託金の必要な対象なのか、基準が曖昧で解釈が分かれている。共通通貨に関してはゲーム運営各社とも供託しているが、アイテムについては個別に判断しているのが実情だ。
LINEの売上高は2015年12月期で1207億円と前の期に比べて40%伸びた。売上高のうちゲームは約4割を占める稼ぎ頭。しかし、陰りもみえている。
月間利用者の増加数を3カ月ごとにみると、14年9月~15年3月まで1100万~2400万人だったのが、15年4月以降は100万~600万人と鈍化。一部の音楽配信を終了し、個人間で衣料品などを売買するフリーマーケットアプリからの撤退を決めた。新規事業の開発でつまずきが目立つ。
3月に格安スマホへの参入を発表。国内のスマホの大半にはすでにLINEが登録されており、今後の成長にはスマホ契約数を伸ばすことが欠かせないとの判断だ。
今回のアイテムで供託金が必要になっても、銀行と供託金の「保全契約」を結んでおり、数千万円の追加拠出ですむという。直接利用者が影響を受けるわけでもない。
ただ、企業イメージが悪化するといった懸念はある。対応を誤れば、株式上場に向けた準備を進めるLINEの不透明要因となるかもしれない。