通信制「N高校」開校 新入生1482人が入学式
「ドラクエ」で「ネット遠足」も
カドカワが4月に開校した学校法人角川ドワンゴ学園「N高校」の入学式が6日、沖縄・伊計島の同校本校(うるま市)と東京・六本木のイベントスペース「ニコファーレ」(港区)の2会場で開かれた。式では奥平博一校長が本校からネット越しに「やりたいことを思い切りやってもらえる学校を目指す。今日が船出。一緒にがんばりましょう」とあいさつ、生徒約90人と保護者らが東京会場の式に参加したほか、約1000人がネット中継を視聴した。
入学式では、東京会場の壁一面に沖縄本校の校舎などが映し出され、そこにカドカワグループのドワンゴが運営する「ニコニコ動画」のように、ネットで参加した生徒のコメントが流れる中で行われ、沖縄本校で校旗が掲揚されたほか、校歌が披露された。東京会場では生徒らがヘッドマウントディスプレーを使って、沖縄会場の様子を360度のライブ映像で楽しんだ。スタジオジブリ代表取締役プロデューサーで同校理事の鈴木敏夫さんや島尻安伊子IT担当相らが参加した。
茨城県常陸太田市の小沼悠乃さん(15)は父、悟さん(51)の薦めでN高校に決めた。悠乃さんは「将来、声優になりたいので、小説の書き方なども学びたい」と話し、悟さんは「普通の高校より娘に合っているのではないか。自宅で家族で過ごす時間も増える」と期待する。埼玉県春日部市の高木春菜さん(15)はニュースでN高校を知り、「プログラミングを勉強したい」と決めた。母の菜穂子さん(42)は「通信制は本人がしっかりしていないと続かないのではないかと心配だったが、今は応援している」と話し、これからは生活リズムなどを保てるようにサポートしていくという。
同校によると、4月現在の新入生は全国1482人で15、16歳の高校1年生が多いが、86歳の新入生もいるという。校名の「N」はNet、New、Nextなどを意味する。単位制の広域通信制高校(普通科)で、同社が昨年秋に開設を発表し、今年3月、沖縄県で認可された。この日の入学生が1期生になる。
生徒は自宅のパソコンなどを使って、教科書を解説した映像教材(1単元につき約20分)をインターネットで視聴して勉強し、テストやリポートによる評価で単位を認定される。一般の通信制高校と同じように決まった単位数を取得し、年5日のスクーリング(面接など、顔を合わせて行う活動)に出席すれば高校(普通科)卒業資格を得られる。
同校の特徴は課外授業にあり、ドワンゴのエンジニアによるプログラミング授業や、森村誠一さんら現役作家による文芸創作講座、予備校講師による大学進学向け授業を受けることができる。いずれもN高生は無料で、独自教材を使い、リアルタイム型のネット授業で行われる。学校行事も、「ネット部活」やゲーム「ドラゴンクエスト」を使った「ネット遠足」を予定している。
また、大学進学を希望する生徒向けには、「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話」の著者として知られる坪田信貴さんがサポートする全寮制の東大コース(名古屋校舎)、代々木ゼミナールと提携した通学コースもある。学費は、通常のコースが3年間で約65万円。東大コースなどは別途、受講費と寮費がかかる。
同校開設の発案者で、カドカワグループのゲーム制作会社会長で同学園の志倉千代丸理事は「社会問題になっている引きこもりや不登校の子供たちは、ニコニコ動画や角川のライトノベルの利用者と重なる。僕らがうまく向き合えるのではないか。また、高校生のうちに、将来なりたい職業を見つけられるような、これまでにない学校を作りたかった」と開校の意図を説明した。
遠隔教育に詳しい信州大学の香山瑞恵教授は「進路の選択肢が広がるのは良いことだ。特徴的な課外授業が話題になっており、プログラミングを学びたいなど、強い動機付けを持った生徒には適しているのではないか。一方で、一般的な高校生にとって、映像教材だけで学習を継続するのは難しい。どのような生徒が学ぶのか、教員によるメンタルサポートがあるのかなど、注目していきたい」と話す。【岡礼子/デジタル報道センター】