Open Network Labが第12期プログラムのデモデイを開催、360°ストリーミング配信基盤の「HUG」が優勝

Masaru IKEDA by Masaru IKEDA on 2016.4.6

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東京のスタートアップ・インキュベータ Open Network Lab は6日、Seed Accelerator Program 第12期のスタートアップを披露するデモデイを開催した。このバッチには、日本の内外から合計93チームのエントリ(うち、海外から19チーム)があったが、中から6チームが選抜され3ヶ月間にわたってメンタリングや支援を受けることとなった。

なお、6チームのうち1チームについては公開されず、5チームがデモデイでピッチした。デモデイの最後には、主要メンターやデモデイに参加した聴衆らによる審査投票でチームを表彰した。

Best Team Award 獲得: HUG by Ducklings

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HUG は360°対応カメラで撮影した動画をライブストリーミングできる配信プラットフォームだ。PC やスマートフォンで閲覧できるだけでなく、バーチャルリアリティ・デバイスにも対応可能な360°動画を、動画またはアーカイブ形式で配信し、特定 URL で視聴者に共有。視聴者からはリアルタイムでコメントを受け付けることもできる。

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Ducklings の高木氏によれば、今年に入って、サムスン・LG・ニコンなどのメーカーから安価な360°対応カメラが続々と発売されるのに対し、それに対応できる簡便な配信プラットフォームが世界のどこにも存在していないため開発に着手したとのこと。これまでに100カ国のユーザによって1,800回にわたり、360°ライブストリーミングが行なわれている。これでまでに、香港のナイキ新作イベント、Coursera のキーノートスピーチ配信、ウェザーニューズのお花見配信などにも利用されている。

Special Award および Audience Award 獲得: 小児科オンライン by KidsPublic

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小児科オンラインは、スマートフォンで家庭と小児科をつなぐプラットフォーム。LINE、電話、Skype、Facebook Messenger を使い、小児の症状について気軽に小児科医に相談することができる。小児科医でもある KidsPublic の橋本氏によれば、救急外来に来る小児の約8割の症状は軽症であることが多いとのことだ。保護者は、インターネットで調べてもよくわからず、自治体が提供する問い合わせ用のホットラインに聞いてもよくわからず、結局、救急外来にやってくるのだという。

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小児科オンラインでは、小児科医監修による問診、症状をスマホ撮影による写真やりとり、電子カルテによる過去に診療内容の管理により、小児の症状について、病院で受診すべきかどうか小児科医が回答してくれる。現在10名の小児科医が相談員として利用しており、個人による利用のほか、企業の福利厚生・保育園との連携・自治体の社会サービスなどの需要を取り込みマネタイズを図る。症例データを蓄積・評価し、将来的には医師を介さなくても受診要否を判断できるシステムを構築することが目標。

Kakaku.com Award 獲得: BabyMap by Trim

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BabyMap は、出先でおむつ交換台と授乳室を検索することに特化したアプリだ。検索エンジンなどを使っても容易にこれらの情報を探し出すことは難しいため開発した。 1日に100件以上投稿されるユーザからの情報集積により成立しており、17,000MAU を誇る。子供が生まれてから、おむつが外れるまでの平均2.5年間は使ってもらえ、ユーザのリテンション率が高い。

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Trim の長谷川氏は、ユーザ情報(属性・行動・嗜好)と施設情報(施設詳細・商品・口コミ)のデータが集積できることから、マーケティングに活用できる点を強調。例えば、都市計画の事前調査に必要になるプロセスを BabyMap で一部代用できることから、デベロッパや商業施設などに利用してもらいマネタイズできる可能性を示唆した。

以下は入賞はしなかったが、興味深いピッチを見せてくれたスタートアップの各チームだ。

Túpac Bio Designer by Túpac Bio

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Túpac Bio Designer は、創薬のための DNA デザインソフトウェア。東京大学のバイオメディカル研究者らによって設立された。大手の製薬会社は多くのコストを創薬研究に費やしているが、依然として失敗に終わることも少なくない。このプラットフォームでは、創薬の成功率を高めることを狙いとしている。

手動の実験に頼っていたプロセスをデジタル化し、合成 DNA を使用したカスタム薬剤ライブラリを活用することで、これまで数週間から数ヶ月かかっていた一回あたりの実験プロセスを数日レベルにまで短縮する。ゲノムコンパイラー、DNA シーケンス、コラボレーション機能、外部データベースとの連携、処理能力の高さなどで、類似プラットフォームとの差別化を図る。

withfluence by HIP Stores

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withfluence は、アジアのトップインフルエンサーにプロモーションを依頼できるマーケティング・プラットフォーム。今年の2月に台湾、タイ、香港でβ版をローンチした。Instagrammer の中から、用途や条件にあった人物にプロモーションを依頼することができる。

プロモーションの依頼者は、withfluence に用意されたインフルエンサー一覧の中から、各人の過去の投稿例を見て選択し、プロモーション案件を打診する。依頼者は withfluence のダッシュボードを通じて、プロモーション依頼後の当該インフルエンサーのフォロワー数の増減、Like 数やエンゲージメント率の推移などパフォーマンスを確認できるのが特徴。東南アジアの広告代理店、タイのモバイルキャリアからサービス利用の打診があるほか、日本のコーセー化粧品は、「雪肌精」の東南アジア向けプロモーションに withfluence の利用を決定しているとのことだ。

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Open Network Lab のプログラムディレクター松田崇義氏によれば、今回の第12期の修了を受け、Open Network Lab は通算で64組のスタートアップを輩出したことになり、第11期までの輩出スタートアップの合計時価総額は438億円と、投資時点から14.52倍のパフォーマンスを稼ぎ出している。

第12期デモデイの開催とともに、第13期バッチへの応募受付が開始された。Open Network Lab は、3ヶ月間のバッチ参加中の活動資金として最大1,000万円を提供。また、これまでに比べ、より海外で活躍できるスタートアップの支援を強化する。Open Network Lab の日本内外3拠点(代官山・鎌倉・サンフランシスコ)の1年間の無料施設利用に加え、Open Network Lab の Seed Accelerators Program からこれまでに輩出された70社のスタートアップらによるメンタリングも提供する予定。第13期バッチへの申込締切は、5月27日の正午となっている。

Masaru IKEDA

Masaru IKEDA

1973年大阪生まれ。インターネット黎明期から、シンクタンクの依頼を受けて、シリコンバレーやアジアでIT企業の調査を開始。各種システム構築、ニッポン放送のラジオ・ネット連動番組の技術アドバイザー、VCのデューデリジェンスに従事。SI、コンサルティング会社などを設立。Startup Digest(東京版)キュレータ。

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