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<原油価格>下落に拍車か イラン輸出拡大、増産凍結に暗雲

毎日新聞 4月4日(月)21時45分配信

 イランのザンギャネ石油相が3日、1日当たりの原油輸出量が200万バレルを超えたことを明らかにした。1カ月前に比べ1日当たり25万バレル増加。イランの増産姿勢が鮮明になったことで、一服していた原油価格の下落傾向に拍車がかかるのでないかとの見方が広がっている。

 原油価格は米国のシェールオイルの増産、中国経済の減速などで2014年以来、大幅に低下した。そこへ今年1月に核問題を巡る経済制裁を解除されたイランが増産し始めたのが重なり、指標となる米国産標準油種(WTI)は2月には14年6月から7割以上も下落して1バレル=30ドルを割り込んだ。

 この価格急落に歯止めをかけようと石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど一部の非加盟国は今月17日にドーハで会合を開き、原油の増産凍結について協議することを決めた。会合への期待感から原油価格は先月後半以降、40ドル台へと持ち直していた。

 しかし、イランはこれまでも生産回復を優先し、増産凍結には応じない考えを示してきた。このイランと反目を続けていたサウジアラビアのムハンマド副皇太子が、今月1日配信の米通信社ブルームバーグとのインタビュー記事で、「イランが増産凍結に参加した場合のみ、サウジも凍結に参加する」と発言。今回のイランの増産姿勢が明らかになったことで、サウジも不参加の可能性が高まっており、今後の原油価格の先行きは見通せなくなってきた。

 産油国の足並みがそろうかどうか情勢は不透明で、17日の会合の結果次第では、ロシアやブラジルなど資源国で続く景気減速がさらに進む可能性も懸念されている。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員は「このまま価格低迷が続くと、能力いっぱいに生産している産油国にとっては厳しい状況となりそうだ。一方、日本など原油輸入国にとっては追い風になる」と分析する。【宮川裕章、岡大介】

 【ことば】イラン制裁解除

 イランの核開発疑惑発覚を受け、2006年12月に国連安全保障理事会が核開発に関係する個人や企業の資産凍結を決議した。これを受け、欧米諸国は独自にイランへの経済制裁を発動した。しかし、13年6月にイラン大統領選で保守穏健派のロウハニ師が当選すると歩み寄りが始まり、15年7月には欧米など主要6カ国とイランが経済制裁の解除で合意し、16年1月に主要な制裁の解除を表明した。イランは禁じられていた原油輸出などの取引が可能になったことで、制裁でダメージを受けた販売網の回復を優先しようと原油を増産。制裁に参加していた日本も2月にイランと投資協定を締結し、資源開発やインフラ輸出の商機とみて、経済関係の強化を急いでいる。

最終更新:4月4日(月)23時6分

毎日新聞

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