イランの核開発問題を巡る画期的な合意の一環として、イランに対する国際的な制裁が1月に解除された。それを受けて、今年の早い段階にも、世界の企業がイランの顧客や提携先に殺到すると考えたかもれない。
しかし、イランとの取引に関して米国の厳しい処罰はいまだ一部に残っている。その懸念から期待はしぼんでしまっている。
米政府の高官は現在、イランとの事業を始めたいと意欲を持つ企業向けに、イランに対する複雑な制裁における処罰を明確にし、理解を深めてもらおうと、非公式な説明会を開きながら世界を回っている。
米企業の海外子会社も米国本社から事業を切り離せば恩恵を受けられるものの、この説明会は皮肉なことに、非米国企業に恩恵をもたらすことになりそうだ。
■非米銀のドル利用を模索
米国務省で制裁政策の副調整担当のクリス・バックマイヤー主任は「合意によって可能になったイランとの取引を思いとどまらせようとしているわけではない」と、3月にドバイで複数回行われた説明会形式のイベントで記者団に語った。さらに同様のイベントは欧州やアジアでも企画されている。
イランとの取引で米ドルの使用が依然禁止されていることがイラン企業との取引を非常に難しくしていると、欧州とアジアの銀行は不満を漏らす。
オバマ政権は、イランは引き続き米国の金融システムから排除すると主張している。しかし米当局は、イランとの最終的な取引がドル建てではない、もしくは米国の銀行が関与していない限り、非米国銀行がイランとの取引のある段階でドルを使えるようにする道を探っている。当局はまた、非米国保険会社がイランと取引をする際に、どのような種類の取引が合法なのかという点について、より安心感を与えられるような手法を検証している。
ケリー米国務長官は5日、「イランは核合意で恩恵を受けるべきだ。実際我々は、合意後にイランと合法的に事業を行うことになっている銀行が、きちんと事業を進めるようにしようとしている」と語った。
しかしながら、米議会の一部の議員からは、イランとの取引でドルを使えるようにする仕組みに対して非難の声が上がっている。共和党のボブ・コーカー上院外交委員長は5日、米金融システムの利用をイランに禁ずることを「成文化」する道を探ると語った。
合意交渉の一員だったバックマイヤー氏は、同氏のチームも非米国金融機関がイランの顧客とどのような金融取引ができるのか明確化している最中だと語った。同氏は、非米国銀行が米国の金融システムを利用しない限り取引はできると繰り返した。