タックスヘイブンでの富裕層・大企業の税逃れ禁止で消費税は廃止できる=ケイマン諸島だけで日本の大企業は60兆9千億円(2013年)とこの12年間で3.2倍増の税逃れ

毎日新聞の報道です。

パナマ文書
アイスランド抗議デモ 首相辞任 与党内からも非難
毎日新聞 2016年4月6日 東京夕刊

【ロンドン矢野純一】脱税の温床とされる租税回避地(タックスヘイブン)を各国の首脳らが使っていたとされる問題を巡り、5日に辞任したアイスランドのグンロイグソン首相が巨額の私財を隠した疑いを指摘されている。租税回避地を巡る問題が3日に明らかになって以降、首脳が辞任に追い込まれたのは初めて。

「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)が、各国の首脳や有名人に租税回避地の利用を指南していたとみられる中米パナマの法律事務所から流出した文書を基に問題を公表。グンロイグソン氏はウクライナのポロシェンコ大統領らとともに名指しされていた。

首都レイキャビクでは、議会前などで首相の辞任を求める数千人規模のデモが行われていた。グンロイグソン氏は議会の解散、総選挙の実施を模索していたが、連立与党内からも非難が相次ぎ、辞任に追い込まれた。

英BBCなどによると、アイスランドの国会議員は議会に資産などを報告しなければならない。グンロイグソン氏は2009年に議員に当選した際、妻と共に租税回避地の英領バージン諸島にある会社を所有していたことを議会に報告していなかった。この会社は数百万ドルの資金を保有しているとされる。また、当選直後、自身が保有するこの会社の株50%を妻に1ドルで売却。売却益を圧縮して課税を逃れた疑いも指摘されている。首相には13年5月に就任していた。

 

そして、朝日新聞の報道です。

租税回避地の秘密ファイル、日本からも400の人・企業
朝日新聞 2016年4月4日05時07分

南ドイツ新聞と「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)が入手したタックスヘイブン(租税回避地)の秘密ファイルには、日本国内を住所とする約400の人や企業の情報が含まれている。

 

この「パナマ文書」、5月には全貌が明らかになると報道されていますから注視していく必要がありますが、日本のタックスヘイブンの問題についてです。

すでに、このブログでは、タックスヘイブンについて、以下の3つの記事をアップしていますので、ぜひお読みいただければと思います。

◆日本の大企業・富裕層はタックスヘイブンで世界第2位の巨額な税逃れ、庶民には消費税増税と社会保障削減
◆富裕層・大企業の税逃れの手口=タックスヘイブンで貧困層から富奪い深刻な財政赤字のツケは庶民へ、ドラッグ・人身売買・臓器販売・マネーロンダリングなど犯罪の温床となるタックスヘイブン
◆世界の富の4分の1を大企業・富裕層が盗むタックスヘイブン=格差・貧困・財政危機を拡大する心臓部

それで、日本の大企業のタックスヘイブンの活用については、日本銀行の「直接投資・証券投資等残高地域別統計」の中に、タックスヘイブンとしては一番有名なケイマン諸島の活用額が暦年で分かります。(残念ながらパナマは分かりません) この日銀データからグラフをつくってみたものが以下になります。

日銀のデータを見ると、初めてケイマン諸島が登場するのが2001年で、その額が上のグラフにあるように、18兆6411億円。直近データが2013年で60兆9280億円で、この12年で42兆2869億円増、3.2倍も増えています。

そして、このケイマン諸島で税金逃れした60兆9280億円に、現時点の法人税率23.9%を課すとすると、14兆5617億円の税収が生まれることになります(※厳密に言うとケイマン諸島の大企業の資産には証券もあるのでそう単純に計算できませんが)。増税前の消費税率5%のときは、消費税の税収は10兆円程度でした。消費税率8%になって直近の2016年度予算で消費税の税収は17兆1850億円です。これに対して、大企業のケイマン諸島のみで14兆5617億円の税収が生まれるので、これに加えて、ケイマン諸島での富裕層の税逃れと、ケイマン諸島以外での大企業と富裕層のタックスヘイブンでの税逃れ(朝日の報道にあるようにパナマでも日本の400の人・企業が活用しているわけです)を加えれば、現在の消費税率8%の税収をも上回ると考えられるのではないでしょうか?

そうだとすると、庶民には到底活用など不可能なタックスヘイブンにおける大企業・富裕層の税逃れをなくすだけで、消費税そのものを廃止することができるのです。これが当たり前の「公正な社会」ではないでしょうか?

(※2015年の上半期の国内投資家の「地域別の増加額トップはケイマン諸島等租税回避地を含む中南米です」との指摘もすでにされていますので、アベノミクスでさらにタックスヘイブンの活用が増加していることは容易に予想できます)

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井上 伸月刊誌『KOKKO』編集者

投稿者プロフィール

月刊誌『経済』編集部、東京大学職員組合執行委員などをへて、現在、日本国家公務員労働組合連合会(略称=国公労連)本部書記、国家公務員一般労働組合(国公一般)執行委員、労働運動総合研究所(労働総研)労働者状態分析部会部員、月刊誌『KOKKO』(堀之内出版)編集者、国公一般ブログ「すくらむ」管理者。著書に、山家悠紀夫さんとの共著『消費税増税の大ウソ――「財政破綻」論の真実』(大月書店)がある。ここでは、行財政のあり方の問題や、労働組合運動についての発信とともに、雑誌編集者としてインタビューしている、さまざまな分野の研究者等の言説なども紹介します。

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