特別ページ『HONDA TODAY AF61』

HONDAの50ccスクーターのTODAY。
安くて愛嬌のあるルックスとカラーバリエーションが豊富なのが売りです。

[アタクシとの出会い]

確か2007年だったと思いますが、今の家に引っ越して、自動車よりも手軽に(自動車は駐車料金が掛かり過ぎる)移動出来る乗り物が欲しくなり、バイク屋さんで購入しました。

バイク屋さんの方が当時言ったのは、他のスクーターに比べ

・遅い(特に加速が弱い)
・燃費もそれほど良くは無い

ということ。
ただ、もうすぐモデルチェンジがあり、この型(AF61)は新車では買えなくなるので、欲しいなら今買った方が良いとも言っていました。
せっかくモデルチェンジするのに古い型を勧めるなんて不思議なこともあるもんだ、と思っていましたが、これは後々意味が分かりました。

※2007年8月にTODAYはAF61からAF67にモデルチェンジ。従来のキャブレター式から電子制御燃料噴射システムPGM-FI(フューエルインジェクション)に変更になりました。
これにより(夏場の)燃費が向上し、乗りやすさが増した・・のですが、弄りどころが無くなってしまいます。

そしてその場で購入。

昔に乗っていた2stの原付と比べると、TODAYはもっさりを通り越して「これ使いもんになるのか?」とまで思える程の鈍さでしたが、家に到着する頃には4stの低くて上品な排気音や、もっさり過ぎる加速も何だか可愛く思えてきたのです。


購入時の記念撮影。ファイルの日付を見ると2007/8/20とあります。ナンバープレートを撮ったのには意味があるはずなのですが、思い出せません。


そして2014年。
アタクシのTODAYは走行距離一万数千kmを超え、ついに言うことを聞かなくなってきました。


・セルが回らない
・回ってもかからない
・キックが戻らない
・ヘッドライトがハイもローも猛烈に暗い
・メーターのライトが切れて昼しか速度が分からない
・ブレーキのワイヤーがのびている
・リアタイヤの空気が抜ける
・元々悪かった加速がさらに悪い
・こんなに遅かった?
・たまにエンストする
・グリップが硬くて手が痛い
・シートが破れている


バイク屋さんに持っていきバッテリーとタイヤ交換、それからワイヤーの調整をやってもらいました(セルは復活し、ブレーキもほぼ直りました。タイヤの空気抜けも当然直りました)が、他にもいろいろ調子が悪いと告げると

「ご自身で直される方がお得ですよ」
「作業は簡単ですので大丈夫ですよ」

と言われてしまいます。
お得で簡単なら是非自分でやらなきゃ、ということで頑張ってみることにしました。

※エンジンオイルについては律儀にきちんと交換していたので、エンジン自体は無事でした。オイルって大切なんだなと思います。
そして無事故車です。これは運だけではないはず。

ということで

ここから毎晩TODAYと向かい合う日々が始まるのでした。


[各部の名称を覚える]

壊れたところを直すにも、部品の名前が分からなければ話になりませんので、まず各部の名称を覚えることにしました。
スマホ片手に愛車の周りを歩きながら、ああ、これか、とやっていきました。

名は体を表す、とは良く言ったもので、名前が役割を表しています。

車体に跨った状態の左側には、黒いプラスチックの箱があり、そのすぐ下には銀色の金属のメカっぽい箱があります。
黒いのはエアクリーナーケース。
おお、これがエアクリーナーか!
銀色の箱はクランクケースです。クランクケースということは、この中には駆動系が入っているんだな、と、何となく思います。
車体右側には換気扇のようなクーリングファンと、消音機兼排気管のマフラーが付いています。

ということは、エアクリーナーから吸われた空気が、キャブレター(見えないけど)を通ってエンジンに行って(見えないけど)駆動系を動かし、最後はマフラーから出ていくということだな、と漠然と想像してみます。

エンストの原因は、きっとマフラーかエアクリーナーのどこかが詰まっているんだろう、と目星を付けてみます。
遅いのと加速の悪化については、駆動系が疲れているのかも。

ライト関係についてはバッテリー交換してもダメだったので、バルブの交換をしないといけないんでしょうが、そもそもどこを開けて交換するのかが分かりません。


[工具を用意する]

工具なら沢山あるのですが、実際車体を確認してみると、かなり奥まったところにナットが付いています。
今までほとんど使わなかったボックスレンチ用のエクステンションバーの出番がついにやってきました。

[外装の外し方を覚える]

TODAYには丸っこいプラスチックの外装が付いているのですが、これを外さないと触れない部分が多いです。
調べてみるとレンチとドライバーですべて外せるので、外し方をマスターしておきました。
カバーを外した時に、中から数年分の埃がモスっと出てきて、凹みましたが、可能な限りきれいにしてあげました。

※ウインカーやテールランプの配線はカバーの方にありました。勢いよくカバーを外すと、断線してしまいそうです。フレーム側にコンセントのようなものがあり、そこを抜けばカバーはフリーになりました。

ナンバープレートの下、泥除けの両脇のネジだけが、なぜかプラスチック製で、どうにも外すのが面倒なので、カバーを戻す時に金属製のナットとボルトに交換しました。
すぐにまたカバーを外すので、こういうところで作業性を良くしておこうかと思ったのです。

ヘッドライト周辺などのハンドルやメーター周りは、フロントのカバーを外した後に、ハンドルの付け根の黒いカバーを外さないと、ほとんど何も出来ない(ヘッドライトのバルブ交換は出来る)ことがわかり、黒いカバーは外したままにすることにしました。
ここだけ外せば、整備性は結構上がりそうです。

カバーの内側にも埃がびっしりでしたので、どうもすみませんという気持ちで掃除しておきました。

[クランクケースやエアクリーナーケースを開けてみる]

エアクリーナーはネジだけで留めてあるのでプラスドライバーのみ、クランクケースはボルトだけで留めてあるのでレンチ(要エクステンション)だけで開けられます。

エアクリーナーというのは、人間で言うところのマスクに当たるのですが、開けてみてびっくり。紙製のフィルターが真っ黒い油まみれの埃で目づまりしていました。エンストの原因はこれですね。
エアクリーナーのフィルターは黒いプラスチックの土台と一体化しているので、この土台ごと交換するそうです。
フィルターを外すと中にホースが見えます。このホースで吸ったり吐いたりしているのでしょう。一応チェックしましたが、こちらは大丈夫そうです。

とりあえず、元通りに戻します。


次にクランクケースを開けてみます。中は何だか分からない黒い埃のようなものがびっしり。
プーリーとクラッチを確認します。二つはドライブベルトで繋がっています。実際に見るとプーリーって結構小さいんだなと感じます。
で、ベルトですが、手で触ると明らかに両側が削れて減ってしまっています。さっきの黒い埃はどうもベルトが削れたカスだったようです。
プーリーのベルトが当たる面をチェックした方が良いそうなので調べてみると偏摩耗が起きて薄く段が付いていました。

クランクケースの蓋側はキックペダルの裏になりますが・・例の黒い埃が可動部の隙間に入り込んで、がっちがちです。これがキックが戻らない原因だったようです。

ということでケース内の埃をきれいに掃除して、元通りにします。
[部品調達]

・エアクリーナーのフィルター
・ドライブベルト
・プーリー
・ウエイトローラー(減ってる可能性が高いので)
・ヘッドライトバルブ(PH7、12V30W)
・スピードメーターバルブ(T10ウェッジ、12V1.7W)
・シートカバー
・グリップ

グリップはあっても無くても良いのですが、シートカバーに合わせて交換しようと思います。

部品はほとんどネット通販で揃えました。
なるべく一回で頼めば送料もお得です。

[作業]

※申し訳ありませんが、作業手順などはきちんとした知識のある他の方のホームページなどで確認してください。


エアクリーナー

エアクリーナーのフィルターは、どうしようかと悩んだのですが、元々の紙フィルターを剥ぎ取り、そこに純正品とは違うスポンジタイプのフィルターを貼り付けることにしました。
純正の方が良いのでしょうけれど。
今までが酷い状態でしたので、どう転んでも悪くはならないと考えたのもあります。
エアクリーナーのフィルターを土台の黒いプラスチックごと水の入ったバケツに入れてしばらく放置し、紙フィルターが柔らかくなったところで取り出し、フィルターを手やラジオペンチでむしり取ります。結構きれいに取れます。
そうしたらすみっこに接着剤を付けたスポンジフィルターを紙フィルターのあった部分に貼り付けて、乾燥させて終了です。


ドライブベルトとプーリーとウエイトローラー

安くて長持ちしそうなので、ドライブベルトは純正品です。プーリーはスペシャルパーツタケガワさんのハイスピードプーリーを購入。ウエイトローラーはキタコさんの5.5gを6個用意しました。


プーリーとドライブベルトとウエイトローラーの関係についてはホンダのページに分かりやすく載ってました。



(全部ホンダのサイトから借りました)

良くできた仕組みですね。
ドライブベルトが摩耗して細くなると速度が遅くなるのもこれで納得です。純正のウエイトローラーが6.5gなので、様子見で5.5gにしました。
プーリーは、ニュアンス的には6段変速の自転車が8段変速になった感じです。ハイスピード、という名前ですけど、6段から8段になったことでスムーズに加速できるようになった感覚です。



ヘッドライトバルブとスピードメーターバルブ

ヘッドライトバルブはPH7の30w。ホームセンターでも売ってます。ヘッドライト下のボルトを外して、リムをぐりぐりやってケースを開け、ソケットを外せばコロンとバルブが外せます。
が、自分のTODAYはソケット周辺のプラスチックが溶けてしまっていて、ソケットを左に回すことが出来なくなってました。
ですが他の方法で取り外しも出来ないので、ウォータープライヤーで掴んで思い切り回します。ゴリゴリ鳴って取れました。

スピードメーターバルブは、ヘッドライトのケースの固定を解除し前方に落とすように逃がした後、メーターは台座のナットを外してぐいっと引出し、メーター下部からドライバーを駆使してばらしていきます。
最後にゴムのソケットに包まれたスピードメーターバルブに到達できますが、ここまで本当に面倒だったので(二度と取り換えなくていいように)自分はT10ウェッジ球と互換のあるLEDに交換しました。


シートカバーとグリップ

シートカバーは被せるタイプです。
メットインを開けて、ちょうつがいの固定ネジを外してピンを引き抜くとシート本体が外れます。
外したシートから古い破れたシートカバーをベリっと剥がしてウレタンのベースを露出させ、その上に新しいシートカバーを被せます。こうすればたた被せた時のように汚い下地が透けずに、きれいに仕上がります。
グリップは古いグリップをカッターで切断。右側にはアクセルの役目を果たす黒いプラスチックの筒が被さっていますが、根元にはズレ防止のでっぱりがありました。
このままだと奥まで差し込めないので、でっぱりはカッターで削り取ります。
グリップは左右確認後にパーツクリーナーで滑らせてはめこみ、最後はゴムハンマーで押し込み完了です。
[試乗]

頑張った甲斐があり、見違えるように好調になったTODAY。
新車の時のフィーリングが蘇ります。
良く考えたら、今のTODAYは怪我が治った状態であって、見た目にはその辺を走っている他の方のTODAYと変わりません。

シートもグリップもまっさらになった今ですから、もうひと手間掛けて、きれいにしてあげても良いじゃないか、と思うようになりました。

[エアクリーナーとヘッドライト、テールライト、スピードメーターの塗装&社外ウインカーへ交換]

自分のTODAYはシルバーです。
銀色で統一感を出したらさぞ綺麗なんじゃないか、ということで、ヘッドライトなどのメッキパーツを探しますが、高いか欠品か、という状況。かろうじて見つけたのがウインカーボディ。
これは自分で塗るしかないです。

全部車体から外してスプレーで塗ります。
メーターのケースは外の円筒部分をカットして強引に抜き取りました。
塗装は嫌いでは無いので、根気よく作業して綺麗に仕上がりました。最後にクリアを吹いて乾燥させて完成。ウインカーも交換しました。
[サイドスタンド取り付けとプラグ交換とおまけ]

TODAYにはサイドスタンドがありません。便利なので付けました。
そして購入後初めてとなるプラグ交換。
もういい加減に寿命だったプラグを交換したら、始動性能だけでなく、エンジンも力強く回るようになりました。
たまたま見たネットの情報でジェットニードルをZOOMER用に代えると調子が良いなんて耳にしたので、一緒にやってみました。
各部が一気に調子良くなったので、もはや何が原因での好調なのかも判別不能です。
それから昔のスクーターについていたようなメッキモールを付けてみました。とても上品でいい感じです。

それからスペシャルパーツタケガワのサスペンションを純正の物と交換しました。フックスパナで強さを真ん中に調整して取り付けましたが、乗り心地が良くなりすぎて大満足です。
[マフラー交換と消音化改造]

見た目のドレスアップのつもりでウイルズウィンさんのテイストマフラーを付けてみました。
スタイルは一気に引き締まって本当に良い感じなのですが、音の大きさにびっくりです。バッフルを付けてもかなりの音量。
テイストマフラーはエキゾーストバイパスから出口まで分解出来る箇所が無いので、中にウール等を入れるわけにもいきません。
音自体は少しヤンチャな感じですが、嫌いでは無いです。
しかも出だしの加速が思い切り悪くなりました。こういう物なんでしょうね。

どうしたら良いのか‥

ということで

ウイルズウィンテイストマフラーを消音化改造することにしました。


ホームセンターで見つけたステンレス製のパイプのジョイントみたいなもの。32mmとあります。


そして太さ16mmのステンレス巻の鉄パイプ。

パイプは自宅に帰ってからパイプカッターで5cmちょいくらいに切断します。


作業は図で説明します。



バッフルの内径は16mmパイプにぴったりなので、図のように差し込みます。パイプのAの部分をペンチなどで軽くつぶすと、抜けなくなります。


こんな感じにマフラーに収まるようにします。マフラーの中には穴の沢山空いた隔壁がありますので、そこにぶつからない程度にパイプを差し込む感じです。


例の32mmのジョイントです。断面図も載せました。こんな風に中に中途半端な仕切りがあります。Bの部分にバッフルの固定ボルトが入る大きさの穴をドリルで空けます。


今穴を空けたジョイントは、こういう感じでマフラーの出口にはまります。内径もばっちりです。


出来上がりはこんな感じです。
最後にバッフルの固定ボルトで共締めして固定します。



自分は万全を期す為に、パイプと隔壁の間にスチールたわしの切れ端を入れてみました。
排気口の穴の大きさ自体は、ほんの僅かしか小さくなっていませんので、詰まりは問題なさそうです。ためしに口でスーハーしてみましたが、大丈夫みたい。

エンジンを掛けてみると、違いはすぐに分かりました。

トットットッ!ブリブリブリブリブリー



ドッドッドッ!ボルボルボルボルボルー

になりました(?)。

音量も加工無しと純正の間ぐらいで、かなり優しくなりました。普通に走ってるビッグスクーターぐらいにはなった、ような、気がします。
それから原理は良く分かりませんが、悪くなっていた出だしの加速が改善されています。期待していなかった副産物におどろきです。

マフラーがこんなに奥深い物だったなんて思いもしませんでしたが、音が抑えられただけでもやってよかったかなと思います。

※定期的にボルト類は増し締めが必要です。面倒なら緩み止めを塗るなど、工夫してください。
[完成]


可愛らしい顔してますね。

キャリアは使わないので外してしまいました。カーブしたお尻がいい感じです。




白いシートとグリップが優しい雰囲気を作ってくれました。
車体は銀と黒の二色しか使っていないので、シートとグリップでいろいろな雰囲気に変えられると思います。


今回、いろいろ勉強になりました。
こんな風にやる気と、同時に楽しい思いにさせてくれたバイク屋さんのお兄さんに感謝して、終わりにしたいと思います。

読んでいただいた方もありがとう。
面白かったから(別の車両でも)またやりたいです。

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