NECと産業技術総合研究所は5日、人工知能(AI)の大型共同研究に乗り出すと発表した。産総研の臨海副都心センター(東京・江東)に共同研究拠点を設け、3年間にわたって、新製品開発の戦略決定やまれに起きる災害の予測などを可能にする人工知能の研究に取り組む。NECは年間1億円以上の研究費を投じ、先行する欧米を追いかける。
新拠点「産総研―NEC人工知能連携研究室」は6月1日に設置する。NECと産総研から半分ずつ計30人の研究者が参加し一体的に研究する。
AIは、膨大なデータから人間には見つけられない法則を発見するが、大規模災害などたまにしか起きない事象や新製品開発など、過去のデータが少ない状況に対応するのは不得意とされる。
そうした弱みを補うため、共同研究では産総研が持つ高度なシミュレーション(模擬実験)技術を活用。様々な状況におけるデータを作成し、データを補って法則を見つけるAIを開発する。実現すればAIの用途が拡大するとみられる。
AIの研究開発はグーグルやIBMなど、米国勢が先行した。日本では最近、産学が連携して米国を追撃する動きが拡大している。トヨタ自動車は今年1月、米に研究拠点を設立。スタンフォード大などとAIを使った自動運転技術などの研究を進めている。動画配信大手のドワンゴは東京大学などと、人間のように自律的な判断ができるAIの研究に取り組む。サイバーエージェントは明治大学とAIによる広告自動生成システムの開発に着手した。
人工知能の研究に出遅れた日本は、米国に比べ人材の蓄積が少ない。産官学の連携によって研究を拡充し、独自技術で競争力の強化を目指す。