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テロが蔓延(まんえん)する時代、核の危うさが増している。世界に散在する…
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テロが蔓延(まんえん)する時代、核の危うさが増している。世界に散在する核物質をテロ組織や過激派の手から、どう守るか。
その喫緊の問題を話しあう核保安サミットが先週、米ワシントンで開かれた。50カ国以上の首脳らが、核物質の管理強化などの共同宣言を採択した。
原発や研究機関など原子力技術を持つ国が施設や物質を厳格に管理することは、世界に対する義務だ。各国首脳がその認識を共有した意義は大きい。
首脳会合は今回を最後とし、今後は国際原子力機関(IAEA)などが引き継ぐ。核テロを防ぐ国際的な警戒体制をいっそう引き締めるよう心がけたい。
核保安サミットは、「核なき世界」を掲げたオバマ米大統領が提唱し、2010年から2年に1度開かれてきた。
この間、核軍縮や核不拡散の分野で、期待ほどの進展があったとはいえない。イランの核問題は合意ができたものの、米国とロシアの対立で軍縮は滞り、北朝鮮は核実験を繰り返した。オバマ氏が「多くの仕事をやり残した」と述べた通りだ。
一方、4回のサミットは一定の成果をあげた。各国がプルトニウムや高濃縮ウランなどの研究用核物質を米ロに引き渡し、盗難や強奪のリスクを下げた。核物質がどこで作られたか探る技術開発や人材育成も進んだ。
こうした地道な努力は重要さを増している。過激派組織「イスラム国」(IS)など国家ではない組織が伸長するなか、原発や医療用の放射性物質の普及で、核の悪用を防ぐ国際行動は火急の課題になっている。
実際、先月のベルギー連続テロでも、自爆した容疑者が原子力技術者の動向を監視していたことがわかり、原発などを狙っていた疑いがでている。
最後のサミットにロシアは欠席したが、核テロの脅威に国境はない現実を直視すべきだ。今後も軍縮とテロ対策の両輪で、「核なき世界」を追い求める努力を各国首脳に求めたい。
原発大国である日本は、初回サミットの時は海外の専門家が眉をひそめる問題国だった。福島第一原発では、米国からのテロ対策情報が生かされていなかったこともわかっている。
米研究機関の採点では、事故後に日本のテロ対策は改善したとされるが、原発の防護や作業員の管理強化などは途上だ。
非核保有国としては特別に大量のプルトニウムを持ちながら、その削減計画がないという現状は、0点と評されている。日本の原子力の保安そのものが問われていると考えるべきだ。
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