高齢者による暴行・傷害事件が増えているという。先月11日(2016年3月)には福岡県中間市で、81歳の女性が住む家に断りなしに入り込み、注意した小学生女児に暴行を加えケガを負わせた65歳の女が傷害容疑で逮捕された。同じ団地に住む梅田道子で、酒に酔っていた。

上がり込むのを見た近所の小学女児3人が駆けつけ、「おばあちゃんは身体が悪いんだから、そこにいたらいけない」と注意しところ、梅田は「うるせい」とふすまを破るなど暴れ出し、カーペットクリーナーで女児らの頭を叩いたという。

取材した岡安弥生リポーターによると、梅田は2年ほど前からこの団地に住み始め、酒を飲まないとおとなしく優しいが、酔うと性格が一変して住民とのトラブルをたびたび起こしていた。警察の調べに梅田は「自分は何もしていない。逆に子どもたちにやられた」と話しているという。

「高齢者の犯罪」20年で45倍

こうしたキレる高齢者は増えている。警察庁によると、暴行を振るった高齢者の検挙件数は20年前には67人だったが、2013年には3048人と45倍の増加だ。最近では、兵庫・加古川市で75歳の男がタバコのポイ捨てを注意した6歳男児の首を絞めたり、東京・千代田区では69歳の男がベビーカーが「邪魔だ」とすれ違いざまに1歳児を殴る事件が起きた。

20年前に比べて高齢者の人口が増えているから、検挙数も増えているという単純な理由もあるだろうが、なぜ暴力を振るうなど荒れるのか。高齢者問題に詳しいノンフィクション作家の新郷由紀さんは「関わってくれる人がいない、日常的楽しみがない、人間関係がうまく築けないなどで孤立化し、キレやすいくなっています」と話す。

コメンテーターの菅野朋子弁護士も「高齢者の犯罪は、以前は貧困による万引きが多かったのですが、暴行が増えているのは実感としてありますね。高齢者は孤立しやすいのに、とくにインターネット、スマホ時代で高齢者は置いてきぼりになっているのでしょう」

孤立する高齢者をどう社会に迎え入れるかが課題だろう。