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アンノン・ゲーム

人生は未知のもの。だから、私は書き続ける-。

銀河英雄伝説・第8話「冷徹なる義眼」感想

銀河英雄伝説

 

本編とあらすじ

 



 

【地球から銀河系に進出した人類は、

西暦2801年、銀河連邦を樹立し、この年を宇宙暦元年とした。

清新と進取の気風に溢れた人類の黄金時代のはじまりである。

 

宇宙暦296年。

 

連邦軍の若き英雄であったルドルフ・フォン・ゴールデンバウムは、

政界に転じその強力なる指導力をもって、

連邦議会に確固たる地位を築くにいたった。

 

そして、同310年。

 

首相と国家元首を兼任したルドルフは、

銀河帝国の成立を宣言し、自ら初代皇帝の地位に就くとともに、

宇宙暦を廃止し帝国暦元年とした。

 

ルドルフの支配は苛烈を極め、

批判者や反対者を弾圧粛清する恐怖政治へと移行していった。

 

帝国暦164年。

 

若き指導者アーレ・ハイネセン率いる共和主義者の一団が、

この帝国領を脱出。

宇宙の危険宙域を超えたサジタリアス湾に到り、

新たに自由惑星同盟を建国し、宇宙暦を復活させた。

 

宇宙暦640年。

帝国暦331年。

 

銀河帝国自由惑星同盟は最初の接触をし、

以来150年にもわたる長く不毛な戦いの歴史を繰り広げてきた。

 

とくに帝国領と同盟領を結ぶ唯一の航路であるイゼルローン回廊に、

帝国軍が築き上げたイゼルローン要塞をめぐって多くの血が流されてきた。

 

いま、そのイゼルローン要塞を、

ヤン・ウェンリー指揮下の同盟軍が奪取した-】

 

帝国軍の将校はイゼルローン陥落に動揺するが、

オーベルシュタインはいつでも取り戻せると言った。

ただ、それを誰にやらせるかが問題だという。

 

その頃、オーディンではミュッケンベルガーをはじめとする、

帝国軍の三長官が敗戦について憤っていた。

 

国務尚書のリヒテンラーデは、皇帝・フリードリヒ4世に事態を報告した。

 

外敵からの侵入を防ぐイゼルローンの陥落を知ったラインハルトは、

同盟軍は反乱軍だと言い切った。

 

そして、帝国軍の将校たちが現実を見ずに、

体面ばかりにこだわったから悪い結果になったというのだった。

 

ラインハルトは戦いに備えるため、配下たちに艦隊の整備を命じた。

だが、彼らは歴戦の勇者ばかりで、智謀が冴える将校ではなかった。

 

キルヒアイスは全面的な協力を申し出るが、

ラインハルトは彼を参謀にするには、善人すぎると思っていた。

 

また、艦隊を任せたいと考えていたのだ。

 

帝国軍の三長官のひとりは、イゼルローンでの敗戦について

司令官を2人置いたことが失敗だったと考えるが、

それは結果論に過ぎなかった。

 

彼らは生き残ったオーベルシュタインに責任を取らせようとするが、

地位に恋々としていては批判されるので、辞表を書くことにした。

 

そんななか。

 

オーベルシュタインはラインハルトのもとを訪ねて、

銀河帝国への憎しみを語りながら、自身の才を売り込む。

 

ラインハルトの野望を見抜いていたからだった。

 

三長官の辞意に対して、国務尚書のリヒテンラーデは、

ラインハルトに地位が渡ることを危惧するが、それは杞憂に終わる。

 

かくして、オーベルシュタインはラインハルトの参謀となるが、

キルヒアイスは彼に危険なものを感じ取っていた。

 

そして、リヒテンラーデは

ラインハルトが帝国を簒奪するのではないかと皇帝に告げるが、

フリードリヒ4世は「良いではないか」とつぶやくのだった-。

 

台詞

 

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オーベルシュタイン【実は閣下、私は現在、

いささか苦しい立場に立たされています。ご存知かと思いますが・・・】

ラインハルト【イゼルローンからの逃亡者。糾弾されて当然だろうな。

ゼークト提督は壮烈な玉砕を遂げたというのに】

オーベルシュタイン【凡百な指揮官にとって、私は卑劣な逃亡者に過ぎますまい。

しかし閣下、私には私の言い分があります。

閣下にそれを聞いていただきたいのです】

ラインハルト【筋違いだな。卿がそれを主張すべきは私にではなく、

軍法会議においてであろう。

卿は指揮官を補佐し、その誤りを訂正するという任務を全うせず、

しかも一身の安全を図った。その事実を前にしては、どのような言い訳も無力だ】

オーベルシュタイン【違うでしょう。

イゼルローン駐留艦隊旗艦のただひとりの生存者である私は、

生き残ったという、まさにそのことによって処断されようとしているのです】

 

(オーベルシュタイン、左目の義眼をはずす)

 

ラインハルト【・・・?】

オーベルシュタイン【この通り、私の両目は義眼です。

弱者に生きる資格なしとしたあのルドルフ大帝の治世であれば、

とうに抹殺されていたでしょう。

おわかりですか?私は憎んでいるのです。

ルドルフ大帝と彼の子孫と、彼の生み出したすべてのものを・・・】

ラインハルト【大胆な発言だな】

オーベルシュタイン【銀河帝国、いや、ゴールデンバウム王朝は滅びるべきです。

可能であれば、私自身の手で滅ぼしてやりたい。

ですが、私にはその力量がありません。

私にできることは、新たな覇者の登場に協力すること・・・ただそれだけです。

帝国元帥・ローエングラム伯ラインハルト閣下】

ラインハルト【卿は自分が何を言っているのか、わかっているのか?】

オーベルシュタイン【無論です。何度でも言いましょう。

ゴールデンバウム王朝は滅びるべきなのです。

そして、そののち新しい帝国を創る方は、閣下をおいて他にいません】

ラインハルト【キルヒアイス!】

 

(隣の部屋からキルヒアイスが出てくる)

 

ラインハルト【オーベルシュタイン大佐を逮捕しろ。

帝国に対して反逆の言質があった。帝国軍人として看過できぬ!】

オーベルシュタイン【所詮あなたもこの程度の人か・・・

結構。キルヒアイス中将ひとりを腹心と頼んで、あなたの狭い道をお行きなさい】

 

(オーベルシュタイン、キルヒアイスに向き直る)

 

オーベルシュタイン【キルヒアイス中将、私を撃てるか?

私はこの通り丸腰だ。それでも撃てるか?】

 

キルヒアイスは銃を撃つことをためらう)

 

オーベルシュタイン【撃てんだろう。貴官はそういう男だ。

尊敬に値するが、それだけでは閣下の覇業の助けにはならん。

光には必ず影が従う。

しかし、お若いローエングラム伯には、まだご理解いただけぬか】

ラインハルト【言いたいことを言う男だな】

オーベルシュタイン【恐縮です】

ラインハルト【ゼークト提督からも、さぞ嫌われたことだろう】

オーベルシュタイン【あの提督は、部下の忠誠心を刺激する人ではありませんでした】

ラインハルト【よかろう。卿を貴族どもから買おう】

 

感想

 

覇業を成功させるためには、有能な参謀を必要としますが、

ラインハルトがオーベルシュタインを選んだのは正解ですね。

 

銀河帝国のトップの座を手にするためには、

政治闘争や宮廷闘争といった醜い戦いもありますから。

 

キルヒアイスはラインハルト陣営にとって、

調整役のような存在じゃないでしょうか。

 

彼の公明正大な人柄は多くの人を心服させるので、

勢力内に何かあった時には、ブレーキをかけることができるはずです。

 

オーベルシュタインは、ラインハルトを新たな覇者と言いましたが、

本能寺の変が起こったときの黒田官兵衛のようですね。

 

古今東西、切れるナンバーツーというのは、

こうした先見の明を持っているものです。

 

『光には必ず影が従う』

 

オーベルシュタインのこの言葉を聞いて、

この頃のモヤモヤしていた気持ちがスッキリしました。

 

人間には「清濁併せ呑む」という度量の広さが必要なんですよ。