プロのフォトグラファーやイラストレイターさんが、自分の作品を見知らぬ企業に無断使用されたら、捨て置くわけにもいかないと思う。では、使用料を支払ってもらうにはどうしたらよいだろうか。
相手との交渉は3段階ある。
1)メールかファクスで連絡をとって交渉する。
2)メールでの交渉が決裂したら内容証明郵便を送る。
3)内容証明郵便を無視されたら訴訟する。
1)まずはメールかファクスで連絡
もしかしたら、交渉の担当者は著作権の概念がまったくない人かもしれない。先週の記事に書いた演歌歌手の伍代夏子のように「ネット上できれいな写真を見つけてラッキー、さっそく自分のブログにコピペ」ぐらいにしか思っていない人だったら、こちらからのメールを読んで困惑するかもしれない。そうなったらややこしいから、できるだけ温和に連絡したほうがよいと思う。それに、普通はウェブサイトは制作会社に外注している。発注は別の部署がしているとしたら、交渉は自分→相手企業のクレーム担当者→発注者→制作会社の営業担当者→ウェブデザイナーという具合に何人もの人をいったりきたりしながら話が進む。こうなると例え相手に誠意があったとしても交渉は結構時間がかかるかもしれない。
そういったことを踏まえて、まずはメールまたはファクスで先方に連絡をする。できるだけこの段階で話をつける方が簡単だね。
メールとファクス番号はウェブサイトの会社概要に書いてある筈。
文書の要点はこんな感じ。
・無断転載の内容を具体的に書く
・使用料を支払ってほしいので担当者と連絡を取りたい旨を書く
・最初の返事の期限を設定する。
以下に文例を記すので、必要に応じてコピペしてテンプレとして使ってください。自由に書き換えて結構です。
タイトル:著作権侵害の抗議について
本文:○○株式会社ウェブ担当者様
拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
この度、貴社ウェブサイト(URLを記述)に、私が撮影し著作権を有する写真○点(写真の内容を記述)が無断で転載されていることを確認いたしました。転載元は私のブログ(URLを記述)です。これは著作権法に違反しています。
つきましては、該当写真の掲載を即刻中止してください。
また、ご使用になった料金をお支払いいただきたいと存じます。ご相談させていただきたいので、○月○日までにご連絡をいただきますようお願い申し上げます。
有賀正博写真事務所
住所○○
電話○○
ぼくはフリーランスだから、有賀正博写真事務所というのは屋号だ。
返事は「至急関係部署に確認致しますので、恐れ入りますがお待ちください」だけかもしれないが、それならのんびりと待っていよう。まともな会社ならネクサスリゾート(茂山組)のようにメールを無視することは有り得ない。
ウェブページを保存して証拠の確保
メールを送る前に、証拠として当該ウェブページを自分のパソコンに保存しておこう。Macならブラウザで当該頁を閲覧中にCommand+Sで保存できる筈。相手のウェブサイト全体を保存するときは、MacならSiteSuckerという無料アプリをネットからダウンロードして使う。相手サイトのトップURLを入力してクリック一発で、サイト全体を一括ダウンロードできるから大変便利だ。しかもサイト内リンクは維持されたままというスグレモノだ。
保存したサイトを見るときは、フォルダ内の「_downloads.html」というファイルをダブルクリックする。
Windowsでも同様のアプリがあると思うからWinユーザーは探してみてください。
写真の使用料金の算出基準は
写真使用料の算出基準だが、普段からレンタルフォト業務をしているフォトグラファーならその金額を請求すればよい。といってもデジタル時代のウェブ用途での相場はそんなに高いものではないかもしれないし、そもそも使用料は変幻自在なものである(笑)。そこでレンタルフォト業界最大手のアマナイメージズの料金表を基準にしてみよう。アマナイメージズは、以前はフォトニカというエージェンシーだったが、世界文化フォト、オリオンプレスなどかつてのライバルを吸収合併してレンタルフォト業界の最大手となった。資本金10億円、売上209億円という大規模な会社だ。交渉相手にもアマナのサイトで料金を確認してもらえば、業界標準はこんなものかと納得してもらいやすいと思う。
アマナの料金表では、ウェブ用途で広告用途なら、1年間で4万円、3年まで6万円である。担当者に使用期間を確認しよう。使用期間は単に「2年間」ではなく「2013年4月頃から使用しました」と具体的な日にちを聞きだすこと。
なお、無断使用の割増金をアマナは2倍と設定している。割増金を何倍にするかは自分で決めればいいと思う。時事通信社の料金表を見たらなんと割増金を10倍に設定しているが、そんなに請求したら荒れそうだからせいぜい2〜3倍が適当だろう。穏便に済ませるなら割増金はなしでもいいかもしれない。この辺は交渉力が問われるところだ。
できるだけこの段階で先方と折り合いをつけられるようにしたいものだね。
写真使用料は無料の筈だと主張されたら
ぼくのケースでは、ネクサスリゾート(茂山組)の社長は、Yahoo!でキーワード「無料画像 セビリア」でヒットした画像を使っただけなんだから写真は無料で使える筈だ、と主張してきた。

そう言われて「無料画像 セビリア」で検索したら、確かに500番目ぐらいにぼくの写真がヒットする。無料ではないんだけどなあ… 。しかし「無料」で検索したものがすべからく無料で手に入ると考えているとしたらうかつすぎる。そんなITリテラシーの低い人が会社社長をしているのだろうか。きっと社員は普段からこの社長に無理難題を言われて大変だろう。今も信じられない話だ。
もちろん、こんな主張は通らない。
先のアマナイメージズはこの春の著作権侵害裁判で「有料とは知らなかったから支払い義務はない」と主張する無断使用者に対して勝訴した(東京地裁2015年4月15日判決(確定)、事件番号:平成26年(ワ)24391号)。詳細はアマナのサイトで読める。または裁判所のサイトで事件番号を入力すれば判決全文をPDFで読める(長文)。
万一、「俺様が無料だと言っているのだから無料だ」と先方が主張したら、この事件番号を伝えればよいだろう。
それでも折れない相手には内容証明郵便を送る。
内容証明の書き方は次の機会に。
