マジックでは、マジシャンが素早い動作を終えた直後などに観客はそろってまばたきし、その瞬間、次の手品の仕掛けがなされている――。手品にだまされる謎に迫るこんな研究成果を、大阪大の中野珠実准教授(認知神経科学)のチームが4日付の海外科学誌電子版に発表した。
チームはこれまでに、観客がまばたきをすると、注意をつかさどる脳の活動が低下することを突き止めており、トリックには観客の油断が関係していた。
チームは、体のあちこちからコインを取り出すマジシャンの映像を学生ら20人に個別に見せ、目の動きを近赤外線カメラで撮影。全員がほぼ同じタイミングでまばたきする瞬間があった。コインを取り出す素早い動作が終わった直後に集中し、マジシャンが次の手品の仕掛けを用意する場面と一致していた。
チームによると、マジシャンは演技に緩急をつけて観客の注意をそらす「ミスディレクション」と呼ばれる手法を使って仕掛けをするとされるが、本当にそうなのか科学的には実証されていなかったという。
中野准教授は「まばたきが一斉に起きるタイミングを詳しく調べることで、注意を引く新しい映像表現の開発に利用できるかもしれない」と話した。〔共同〕