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福岡市の暮らしやすさは世界標準!? 国連機関が高評価、モデルに推奨
居住環境の改善に取り組む国連機関「国連ハビタット」(本部、ケニア・ナイロビ)が、加盟国に推奨する都市づくり指針の中で、各国の優れた都市計画の事例として日本から唯一、福岡市を選んだ。コンパクトシティならでは通勤・通学時間の短さを理由に挙げた。(九州総局 高瀬真由子)
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ハビタットが作成したのは「都市と国土計画に係る国際ガイドライン」で、世界26の事例を取り上げた。福岡市は「コンパクトで暮らしやすいまちづくり」のタイトルで紹介された。
電車や地下鉄など多様な交通機関の選択が可能で、港湾や鉄道、空港との接続性が高いことが評価された。
こうした交通網の発達で、市民の半数近くが30分以内で通勤・通学できる「移動時間の短さ」が、生産性や生活の質の向上に貢献していると指摘した。
確かに、福岡市の通勤・通学時間の短さは、大都市圏の住民からみると、うらやましい特長だろう。
平成25年住宅・土地統計調査結果(総務省統計局)によると、関東大都市圏の通勤時間は「30分~1時間未満」が35・6%、「1時間以上」が29%あった。
民間シンクタンク、九州経済調査協会(九経調)の小柳真二研究主査は「時間あたりの仕事量を考えたときに、通勤による疲弊がない方が、仕事の効率も上がると考えられる」と語った。
また、市民の9割が自分達の街に誇りを持っているとの調査結果も盛り込んだ。
3月24日、ハビタット福岡本部長の深沢良信氏が、福岡市の高島宗一郎市長にガイドラインの日本語版を手渡した。
高島氏は「世界に向けた強い発信になる」と喜んだ。深沢氏は「大事な機能が狭い範囲で秩序よく固まり、(各地区が)効率よくつながっている観点で、福岡市はよくできた都市だと評価されている」と語った。
ガイドラインは、各国政府や地方自治体、学会などから推薦された専門家34人が検討を重ね、作成した。昨年12月、米・ニューヨークで開かれた国連総会で報告された。
福岡市のほかには、大規模な緑化に取り組むオーストラリア・メルボルンや、製鉄工場を劇場にリニューアルし、都市環境の改善に取り組むドイツのライン・ルール大都市圏などを挙げた。
国連ハビタットのホームページで公開されているほか、11カ国語に翻訳されており、都市計画を見直す際の指針にしたり、国際会議で活用されたりする。都市化が進む発展途上国では、将来を見据えた都市計画づくりに役立てられるという。
国連ハビタットは、福岡市のほか、ナイロビ、カイロ(エジプト)、リオデジャネイロ(ブラジル)に拠点があり、福岡本部はアジア太平洋にある30の国と地域を管轄する。