フジサンケイビジネスアイ記事【ニュースの仕掛け人 ザ・PR会社】2008年5月23日

【ニュースの仕掛け人 ザ・PR会社】(39)テレビ軸に事業拡大
2008/05/23, FujiSankei Business i., 15ページ,  , 1706文字 書誌情報類似検索印刷イメージを表示

 ■アビーズファクトリー 阿部光利社長
 ■フューチャーアイズ 高橋勇人社長
 インターネットが普及し、放送チャンネルの数が増え、長年多くの映像コンテンツを大衆に届けてきたテレビメディアも、まだ大きな存在感はあるものの、一方で変化を強いられている。徐々に変化するテレビ分野でも独創性の高いPR力が求められている。
 ≪CMをニュースに≫
 ネットの拡大で、テレビCMの効果が薄れているといわれる。そのCMをニュースにして注目度を上げようという逆転の発想が「CMパブリシティ」という方法だ。
 この分野で個性を発揮するのが、Ab’z FACTORY(アビーズファクトリー)だ。
 社長の阿部光利さん(51)はテレビの事件リポーター出身という異色の経歴の持ち主だ。オウム真理教の松本智津夫死刑囚(53)=教祖名麻原彰晃=に過去3回インタビューをした経験もある。新聞記者やアナウンサー出身者が多い中で民放各局のワイドショーや情報番組などで16年間にわたり活躍した。
 「TVリポーターを辞めた後、ひょんなことからあるイベントにテレビを呼んでくれないかと知り合いから頼まれた」ことがきっかけでPRの世界に入る。リポーター時代の16年間に培われた人脈が功を奏してイベントは成功し、広告代理店の紹介でPR会社に就職する。そこでPRのスキルを学び2004年に独立した。
 CM放映前に記者発表をしたり、CM撮影時のメイキングビデオなどをニュースリリースとともに主要テレビ局に配信する。「ニュース番組やワイドショーが要望する話題や素材が肌感覚で分かる。それを提供するからCMの認知度が俄然(がぜん)上がる」と効果を解説する。リポーター時代のネットワークが生き、タレントを起用したPRイベントの企画からメディアの誘致、総合プロデュースまで業務は広がる。
 テレビの世界での人脈と経験を武器に、社名通りABからZまでニッチな分野で存在感を示していく。
 やはりテレビPRから業務を拡大したのが、フューチャーアイズ。社長の高橋勇人さん(38)は、「テレビの場合は即効性はあるが、PR効果が続かない」と指摘する。
 ≪エンタメ分野に進出≫
 そこでネットPRにも力を入れる。商品のサンプルモニターのためのブロガーを独自に募集し、商品の使用感など自分の思ったことを書いてもらう。さらに、ネット上で口コミをウイルスのように広げる「バイラルプロモーション」にも取り組む。
 テレビ、ネットのほか、PRイベントや記者発表会、メディア向けセミナーなどを企画し、実施する。メディアリレーションズをコアにした基本的なPR活動も支援して、クライアントのPR効果を最大化させている。
 同社が今後、特に力を入れようとしているのが、エンターテインメント分野だ。テレビに強みを持つ会社としてスタートし、芸能事務所やスポーツ選手などとのつながりも多い。
 高橋さんは、「ネット時代に重要となるコンテンツをエンターテインメントの領域で提供していく」と将来の方向性を明かす。放送作家やプロダクションなどと連携してネットで配信するエンターテインメントコンテンツの事業を進める計画だ。また、海外にも事業の足場を作るため市場が拡大している中国に強いコンサルティング会社とも提携し、今年の3月から中国進出も果たした。
 もともとミュージシャン志望だった高橋さん。今後どんなコンテンツを提供してくれるのか楽しみだ。(バンブークリエイティヴ代表・竹村徹也)
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【プロフィル】阿部光利
 あべ・みつとし 1956年山形県生まれ。国士舘大卒。出版社から、「おはようナイスデイ」(フジテレビ)、「グッディ」(テレビ朝日)などのリポーターに。PR会社を経て、2004年アビーズファクトリー設立、社長就任。
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【プロフィル】高橋勇人
 たかはし・はやと 1969年福井県生まれ。慶應義塾大卒。93年からプロのミュージシャンを目指して、ライブ活動や楽曲の制作に没頭する。95年建設会社入社、PR会社に転職し、2001年フューチャーアイズ設立、社長就任。