フリーランスで仕事を受けると、依頼主の会社から「業務委託契約を結びたい」と言われる事があるかもしれません。
何となく言葉の意味は分かるけど、「業務委託契約」とは自分にどう影響があるのか、会社はどのような意図で提案するのか、はっきりと理解できない場合が多いようです。
ここでは、「業務委託契約」の意味や目的などをご説明しましょう。
業務委託契約とは何?
「業務委託契約」という言葉を聞くと、何やら法律で決まっている用語のように感じますが、「業務委託」という言葉は民法の条文に存在しません。
「業務委託」という言葉は広範囲すぎて、はっきりと定義できないからです。
実際は、「請負契約」「準委任契約」「著作権譲渡」といった複数の法律を組み合わせて契約を形作ります。
それらを文書にまとめたのが「業務委託契約書」です。
業務委託契約書とはどんなもの?
こちらが業務委託契約書の一例です。
「業務委託契約書」というタイトルの下にずらずらと文章が並んでいます。
タイトルは、場合によっては「広告物作成委託契約書」や「イラスト制作依頼契約書」と変わりますが、タイトルは法律的には重要ではなく、内容が重視されます。
ちなみに、契約は口約束でも法律上は結ばれた事になりますが、後々のトラブルを避けるためにも明文化しておいたほうが良いでしょう。
業務委託契約の内容は?
「業務委託契約」と言っても、上で述べたように法律で定まっていませんので、それぞれの仕事ごとに内容は異なってきます。
例えば、ポスターの制作を依頼された時は、「請負契約」を基本とした内容になるでしょう。
「請負契約」とは、仕事の完成を目的とし、注文者が希望した結果が得られた後、報酬を受け取るというものです。
つまり、ポスターを制作する場合、依頼主が納得する出来にならなければ仕事は終わりません。
また、ポスターを作った時点では制作者に著作権がありますので、それを依頼主に譲渡する文言も入っているでしょう。
さらに、ポスターが公開されるまで他人に明らかにしないというような「秘密保持」の条件もあるかもしれません。
このように重要な事柄が書かれていますので、契約書は必ず目を通す必要があります。
もし不明な点があれば、依頼主に確認しましょう。
委託契約との違いは?
「委託契約」は、正式な民法上の名称は「準委任契約」と言います。
「準委任契約」とは、事務の処理を目的とし、その作業を適切に済ませれば、委任者の希望した結果を得られなくても、報酬を受け取る事ができます。
例えば、医師と契約を結んだ場合、医師は患者を診療しますが、病気を治癒できるとは限りません。
しかし、診療という業務を遂行しているので、報酬は支払われる訳です。
この「準委任契約」は、クリエイター系にはあまり関係しませんが、例えばホームページを作成する場合、そのホームページの管理も任せるという業務が入っていれば、この契約に該当します。
業務委託の注意点は?
法律を順守して作成された契約書なら、ほとんどの場合は大丈夫ですが、中には依頼主に極めて都合のいい条件が紛れ込んでいる事もあります。
「業務委託」は依頼主と請負人が対等な立場になっていないと違法性が問われます。
具体的な事例として:
- 委託元からの仕事の依頼や業務の指示を断る事ができる項目がない
- 報酬が出来高払いではなく時間給や月給
- 委託元以外から自由に受注できない
このほかにも、業務を行う場所や方法を細かく指示や、同じ業務を行う会社員よりも報酬が低いといった条件は、委託元からの使用従属性がある、つまり、労働者と見なされます。
労働者ですと、雇用主は雇用保険を始め福利福祉から通勤費、文房具代まで負担しなければなりません。
特に「準委任契約」は、会社の責任逃れや賃金カットの方法として悪用されがちです。
フリーランスが働く上でしばしば関係してくる「業務委託契約」ですが、打ち合わせを綿密にし内容を吟味しないと、不利な条件を結ばされる危険性もあります。
フリーランスになったらすべての事において自己責任が求められます。
仕事の契約でも、慎重な対応を心がけましょう。