切り替え件数は1%にも満たなかった!
新年度入りを機に、「8兆円市場の開放」「260社が新規参入」「消費者の選択肢の拡大」などと、経済産業省が自画自賛する「電力の小売り全面自由化」が始まった。
しかし、肝心の消費者の反応は今ひとつだ。円滑な自由化や電力系統運用のために新設された公的機関の「電力広域的運営推進機関」によると、事前(3月25日まで)に、全国の消費者が契約を電力大手各社から新規参入事業者に切り替えた件数は、全体の1%にも満たない37万8400件にとどまった。
実質所得が伸び悩む中で、生活費を抑えたいという庶民の思いは切実なはずだ。それにもかかわらず、なぜ、電力自由化が盛り上がらないのか。最大の原因は、乗り換えるほど魅力のある料金プランが乏しいことにある。割安なプランの提供エリアは関東、関西の2大都市圏に集中しているうえ、対象もヘビーユーザーに偏っている。
加えて、来年4月に予定されるガスの小売り自由化が実施されれば、今より競争が活発化する可能性がある。それまで判断を保留する方が得策と、様子見を決め込んだ消費者も多いはずである。
日本経済にとって何よりも深刻なのは、盛り上がらない電力自由化の背景に、消費者のニーズや事業者の置かれた経営環境を無視して、官制経済の拡大に邁進する経済産業官僚たちの都合がどっしりと腰を降ろしていることである。
電力業界では戦後長らく、大手10社が各エリアごとに発電、送配電、小売りの電力3業務を地域独占してきた。儲けを期待できる都市部では過当競争が起きる一方、儲けを見込みにくい地域では一向に電力を供給する事業者が現れなかった戦前の反省に立って、制度設計が行われたからである。
電力大手に対して、地域独占に加え、費やしたコストをすべて料金に転嫁する総括原価方式を容認する代わりに、儲けを期待しにくい地域への電力供給義務を課す仕組みになっていたのだ。
こうした規制下の独占には、料金の下方硬直性という強い欠点がある。大口の需要家であり、国際競争にさらされている製造業者にとって、インフラ料金の高止まりは死活問題だ。外国企業に対抗するコスト競争力を失う恐れがあるからだ。