台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業によるシャープ買収が正式に決まり、シャープは鴻海傘下で経営再建を目指すことになった。2日の会見で両社の首脳は明るい未来を語ったが、シャープの高橋興三社長ら経営陣は最後まで再建に向けたビジョンを示せず、問題の先送りを続けたことで、鴻海傘下に追い込まれるかたちになったことは否定できない。その決断力の欠如は、強烈なリーダーシップを見せつけた鴻海の郭台銘会長とはあまりに対照的だった。シャープ経営陣の“迷走”を振り返った。
2日、堺市で開かれた鴻海とシャープの合同記者会見。壇上、郭会長の隣には高橋社長の姿があった。最初は硬い表情だったが、郭会長が冗談を飛ばして会場を沸かせる中、徐々にリラックスしてきたように見えた。
そんな時、厳しい質問が飛ぶ。「鴻海が出資額を1000億円引き下げたことについてどう思うのか」。
官民ファンドの産業革新機構が出資案を取り下げ、シャープの“頼みの綱”が鴻海だけになると、郭会長は当初提案していた条件を変えてシャープや主力取引銀行を翻弄(ほんろう)したことを指していた。高橋社長の反応を固唾(かたず)を飲んで見守る会場。しかし、その答えは「いろいろな経緯があったが、こうして並んで座っているということは、お互いに提携が良いと信じているということだ」というもの。この日の会見では、郭会長も都合の悪い質問にはほとんど答えていなかったが、高橋社長も報道陣をけむに巻くだけだった。
郭会長は、シャープを気遣ってか、「これは買収ではなく出資だ」と話したが、高橋社長も「戦略的提携」「パートナーシップ」と繰り返し、シャープが経営危機の末、やむを得ず外資の軍門に降ったことについては終始、触れられなかった。
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