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シャープ 再生の道筋はこれから

 経営危機に陥っているシャープは、電子機器受託製造大手、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業からの約7000億円の出資を受け入れて同社の傘下で再建する方向で最終調整に入った。

     シャープは3年前に策定した再建計画が2年足らずで破綻し、経営危機を再燃させた。生き残りの最後のチャンスと受け止め、明確な再建戦略を打ち出して新しいスタートを切ってほしい。

     シャープは高度の液晶技術で世界のテレビ市場を席巻したが、リーマン・ショック後の不況で主力の液晶事業が不振に陥った。2015年3月期の連結最終損益は2223億円の巨額赤字となり、大規模な人員削減や本社売却、液晶事業の社内分社化など経営再建計画を打ち出したが、16年3月期も多額の最終赤字になる可能性が高い。

     再建を巡り、鴻海と官民ファンドの産業革新機構が支援策を提示した。革新機構は約3000億円を出資する一方で、液晶事業は同機構が筆頭株主のジャパンディスプレイと統合し、白物家電部門は東芝の同部門と再編することを提案した。液晶技術の海外流出を防ぐと同時に国内の電機業界再編をもくろんだ。

     鴻海は外部から電子部品を仕入れて安価に組み立てる受託生産で成長してきた。基幹部品を自前で手掛けることを悲願とし、シャープの液晶技術を高く評価していた。革新機構の提示金額を上回る出資を提案したうえで、事業の切り売りによる解体はせずに雇用を確保し、シャープブランドを維持する方向性を示した。

     そもそも、国が出資の大部分を占める投資ファンド主導の再建案は、機動性に欠ける上に国民負担がふくらむというリスクもあり、必ずしも今の時代にそぐわない。また、国主導の業界再編に組み込まれる形では事実上の解体につながり、シャープ一体として再建に取り組むことができない。

     鴻海との提携交渉を優先させたのは、国策に左右されずに会社の再建を目指そうという経営者としての合理的な判断だと言えよう。

     もっとも、鴻海の支援を得て当面の危機を回避したとしても再建の道のりは険しい。鴻海自体、不安材料も抱えている。これまでIT業界に対応する圧倒的なスピードと製造能力で業績を上げてきたが、製造拠点を置く中国の人件費高騰で成長に陰りが見え始めているのだ。鴻海傘下でシャープの事業や雇用がどこまで維持されるのか疑問も残る。

     シャープは、これまでの失敗を反省し、技術力や商品開発力を生かした新たなビジネスモデルの創出を急ぐ必要がある。

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