北方領土の日 交渉阻むロシアの強弁
きょうは「北方領土の日」である。1855年に日露通好条約が締結され、択捉(えとろふ)島の北を日露国境と定めて両国の国交が始まった日だ。
また今年は、第二次世界大戦後に日本とソ連(現ロシア)が国交回復した日ソ共同宣言の調印(1956年10月19日)から60年になる。両国はこれを平和条約交渉の出発点と位置づけてきた。節目にあたって交渉を前進させなければならない。
大戦後、ソ連に占領された北方四島(択捉島、国後(くなしり)島、色丹(しこたん)島、歯舞(はぼまい)群島)の返還を日本は求めている。日露政府は「四島の帰属に関する問題を解決して」平和条約を締結すべく交渉を重ねてきた。
ところがロシアのラブロフ外相は1月下旬の記者会見で「平和条約の締結は領土問題の解決と同義語ではない」と述べた。戦争状態の終結を正式に確認する平和条約がいまだに締結できていないのは、56年の共同宣言で領土問題を解決できなかったからである。両国が交渉で解決すべき「四島の帰属に関する問題」はまさに領土問題であり、これを否定するなら交渉は成り立たなくなる。
ラブロフ氏はまた「平和条約締結後に歯舞、色丹を日本に引き渡す」とした共同宣言の合意を「ロシアの善意」と強調した。実効支配を盾に優位に立とうとしているのだとすれば誠実さが疑われる発言だ。
四島のロシア帰属を認めない日本が「大戦の結果を受け入れていない」かのように非難したのもあまりに一方的な主張である。日本は大戦の結果を受け入れ、サンフランシスコ講和条約でサハリン(旧樺太)南部と千島列島を放棄した。四島は放棄した千島列島に含まれない「固有の領土」だというのが日本の主張だ。
これまでの交渉の積み重ねを覆すような一方的な姿勢では、双方が受け入れ可能な解決策にはたどり着かない。北東アジアの安全保障と日露両国の発展のために平和条約が必要だという共通理解を再確認し、問題解決のための建設的な交渉に共に取り組むべきだ。
解決に首脳同士の信頼関係と政治決断は欠かせない。安倍晋三首相がプーチン大統領との会談を重ねてきたことは重要だ。安倍首相は今春にも首脳会談のため非公式に訪露し、プーチン大統領の公式訪日へつなげようとしている。
択捉島に昨夏、「ビザなし交流」の一環で訪れた旧島民ら日本人訪問団と約40人のロシア人住民が協力して小さな日本庭園を造った。旧島民や2世、3世はこうした交流を通じて現島民と相互理解を深めてきた。
日露交流をさらに太く確かなものにしていくためにも、相互尊重の姿勢は欠かせない。