大阪府警 証拠品への意識改めよ
犯罪捜査に伴う証拠の管理が、長期間にわたり、これほどずさんに行われていたことに驚く。
大阪府警で、捜査書類や証拠品が警察署内の機械室やロッカーなどに放置され、約4300もの事件で時効が成立していたことが明らかになった。不適切な保管は、府警の管内65署のうち61署で確認され、1970〜80年代の資料もあった。
証拠が放置されていた事件は傷害や暴行などが大半だった。約1000事件については、逮捕状の請求書など容疑者名を記載した捜査書類が見つかり、その後に捜査を進めた形跡はなかった。犯罪被害者への裏切りであるとともに、捜査への信頼を失わせる深刻な事態だ。
保管場所が手狭なことや人事異動時の引き継ぎがなかったことなどが放置の理由だという。優先度の高い事件が発生したため、捜査が止まったケースもある。大阪はひったくりなどの街頭犯罪が全国で最も多く、被害相談も増えている。ただ、日常の業務が忙しいからといって捜査を投げ出していいはずがない。
府警では2012年、未解決事件の遺留品のたばこの吸い殻が紛失し別の吸い殻を証拠に捏造(ねつぞう)したことが明るみに出た。多忙を理由に押収品をシュレッダーで処分するという不祥事も起きた。
証拠をおろそかに扱ってもかまわないという風潮が組織に広がり、証拠隠滅などの違法行為を招いたのではないかとの疑いが拭えない。
捏造事件の発覚を受けて、大阪府警は全ての警察署に証拠管理の専従係を設けた。さらに羽曳野(はびきの)署の機械室に傷害事件の逮捕状請求書などが放置されていたことが判明したため、全署対象の調査を迫られていた。約4300件の放置はその集計過程で見つかった。最終結果は来月中にまとめられる。
証拠品の放置は全国で相次いでいる。警視庁で14年、時効になった約3500事件の証拠品など約1万点を検察庁に送致せず倉庫に放置していたことが判明した。愛知、福岡両県警でも同様の不適切な管理が明らかになっている。
刑法、刑事訴訟法の改正で殺人や強盗殺人などの時効は撤廃され、傷害致死などは時効が延長された。DNA型鑑定など科学捜査の活用が進み、証拠品を適切に長期間保管することの重要性は増している。
このため、証拠品を警察署単位ではなく、本部での一括管理システムに切り替える警察本部が増えている。紛失防止のためのデータ管理の導入も進んでいるが、肝心なのは捜査する側の意識を改めることだ。公正な捜査、裁判を支える証拠品を管理する責務は重い。