北朝鮮発射予告 地域の危機を高めるな
毎日新聞
北朝鮮が「人工衛星打ち上げ」を予告した。事実上の長距離弾道ミサイル発射である。北朝鮮は、北東アジアの緊張を高める措置を強行してはならない。
北朝鮮が「水爆」と主張する先月の核実験に続く挑発だ。
北朝鮮は平和目的の宇宙利用だと主張している。2012年には実際に衛星軌道に物体を投入した。今回は単純な衛星を軌道に乗せることに成功するかもしれない。
とはいえ、使われる技術は弾道ミサイルと同じだ。「弾道ミサイル技術を利用したすべての発射」を禁じた国連安全保障理事会決議に対する明確な違反である。
北朝鮮は「光明星(クァンミョンソン)」という衛星を打ち上げると主張している。光明星は北極星を意味し、故金正日(キムジョンイル)総書記を象徴するとされる。金正恩(キムジョンウン)第1書記が父の誕生日である16日を意識しているのは明らかだ。
36年ぶりとなる5月の朝鮮労働党大会へ向けた国威発揚を図る狙いもあるのだろう。
脅威を高めて米国に対話を迫ろうとしているのかもしれない。だが、瀬戸際戦術はもう通用しない。国際的な孤立をさらに深めるという結果に終わるだけだ。
金第1書記には短絡的としか言いようのない行動が目立つ。昨年後半から人民生活の向上を強調していたのに、今年になって核実験を強行した。まるで、思いつきで政策を立てているかのようである。
中谷元・防衛相は自衛隊に「破壊措置命令」を出した。自衛隊は、不測の事態に備えてミサイル防衛(MD)システムを展開する。
日本が緊張せざるをえないのは、北朝鮮の核・ミサイル開発が着実に進んでいるからだ。
北朝鮮が12年に発射したミサイルは射程1万キロ以上だったと分析されている。発射台は最近の改修で大型化が図られており、今回はより大型のミサイルとなる可能性が高い。
核実験を繰り返したことで核兵器開発も進展したとみられる。北朝鮮が核ミサイルを持つことは日本にとって深刻な脅威となる。
安倍晋三首相は「重大な挑発行為」と非難し、米国や韓国と連携して北朝鮮に自制を求める考えを表明した。
中国も朝鮮半島情勢のさらなる不安定化は望んでいないはずだ。中国にも協力を求め、核実験に対する安保理での制裁論議を加速させて北朝鮮への圧力を強めてほしい。
北朝鮮は体制生き残りをかけて核・ミサイルを開発しているとされる。だが、本当の生き残り策は国際社会との協調にしかない。緊張を高めても、金第1書記の望む結果など得られないのである。