メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

米大統領選始動 世界に向けた論戦を

 米国の模索を象徴するような混戦である。だが、米国の小さな州で行われた大統領選の候補者選び(党員集会)は風向きの変化も感じさせた。大統領選に名乗りを上げた共和党の不動産王ドナルド・トランプ氏の“旋風″に衰えが見え、過激な主張よりも現実的な対応を有権者が重視する傾向が出てきたことだ。

     例年、全米に先駆けて行われるアイオワ州の党員集会は大統領選の行方を占う上で重要だ。この州と次のニューハンプシャー州の予備選(9日)で上位につけない候補者は弾みを失うのが通例だからだ。

     今回、民主党はヒラリー・クリントン前国務長官が大接戦の末にバーニー・サンダース上院議員を降し、共和党はテッド・クルーズ上院議員が予想外の差をつけてトランプ氏を破った。マルコ・ルビオ上院議員も善戦して3位に入った。

     数々の過激な発言で支持を伸ばしたトランプ氏に対し、白人が圧倒的に多いアイオワの有権者も疑問を覚えたのか。共和党主流派が推すルビオ氏を含めて当面は三つどもえの構図だが、トランプ氏は巻き返すか失速するかの分かれ道といえよう。

     他方、クリントン氏は2008年のアイオワの党員集会ではオバマ現大統領らの後塵(こうじん)を拝し、結局、民主党候補になれなかった。それだけに今回の勝利は大きいが、ニューハンプシャー州予備選は、隣のバーモント州を地元とするサンダース氏の方に勢いがあり、楽観はできない。

     前国務長官で元大統領夫人のクリントン氏が苦しい戦いを続ける一因は、知名度が高いゆえの飽き、いわゆる「クリントン疲れ」のためだろう。父と兄が大統領になった共和党のジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事もアイオワでは低い得票率にとどまった。その背景にも既成の秩序や政治への反発が指摘できる。

     「テロとの戦争」を続けたブッシュ前政権に対し、オバマ政権は医療保険制度改革を断行するなど内政重視の傾向が強いが、オバマ政権下でも経済格差は深刻化している。民主社会主義者を自任するサンダース氏が支持を広げる一方で、オバマ政治に反発する「怒れる白人」層が過激な主張を支持する現象も生じた。

     だが、米国民は極端な提案や主張を不満のはけ口とする段階を過ぎ、現実的に問題解決を論じる局面に入ったようだ。そして米国の問題は国外にもある。米国が「世界の警察官」であろうがなかろうが、世界のリーダーであるのは間違いない。両党の候補者は内向きの論戦のみに傾かず、東アジアや中東を含めた世界戦略を語ってほしい。新大統領は世界にどう向き合えばいいのか、建設的な論戦を聞きたい。

    あわせて読みたい

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 遺骨 白石の「西洋の窓」宣教師か 獄死した屋敷跡から
    2. 神戸女児殺害 49歳被告に死刑…残虐性を重視 地裁判決
    3. NewsNavi 事件 加害少年「ばかにされた」「好きだった」 「文武両道の才媛」予備校生殺害の無念
    4. 鉄道トラブル ベビーカー挟み100メートル 車掌気付かず大破 けが人なし 東京・九段下駅
    5. 英語教育状況調査 中学は千葉1位 国、英検などで初評価

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]