プラスチックごみ 海を守る取り組み急げ
世界の海に漂うプラスチックの微細なごみ「マイクロプラスチック」への懸念が国際的に強まっている。日本近海は特に汚染がひどいとの分析もある。全体像や生態系などへの影響は未解明だが、悪影響がはっきりしてからでは遅い。問題の大きさと広がりを認識するとともに、国際的な取り組みを急ぐべきだ。
マイクロプラスチックは、レジ袋やペットボトル、漁具などのプラスチックごみが時間をかけ、紫外線や波によって砕かれた5ミリ以下の微細な断片だ。回収は困難なうえ、分解されず長く海を漂う。
海に溶け込んでいるポリ塩化ビフェニール(PCB)などの有害物質を吸着することも知られている。魚や貝がプランクトンと間違えて食べる結果、有害物質は濃縮され、食物連鎖を通じて生態系や人体に悪影響が及ぶ恐れがある。
ドイツで昨年6月にあった主要7カ国首脳会議は「世界的な課題」として、効果的で強い対策を呼びかけた。先月には、ダボス会議で知られる世界経済フォーラムが報告書で警告した。海のプラスチックごみの量は「このままでは2050年までに魚の重量を超える」との内容だ。
ただしマイクロプラスチック汚染の実情はよくわかっていない。九州沖合や日本海などを調査した九州大が、海水1トン当たり2・4個を採取し、瀬戸内海西部の6倍との結果を得た。
日本近海では中国、韓国、インドネシア、フィリピンなどアジアからのプラスチックごみの流出と海流との影響で、特に密度が高いという分析もある。
環境省は15年度から3年間、九州大や愛媛大などと共同で、南極海や東太平洋、日本近海に調査船を出して実態把握に乗り出している。各国に急務の問題であることを訴え、排出の削減など対策に向けた国際協力を進めるうえで重要だ。
身近な取り組みも欠かせない。世界経済フォーラムの報告書は、一昨年の世界のプラスチック生産が50年前の20倍以上の約3億トンに増え、今後20年間でさらに倍増すると予測した。世界中でマイクロプラスチックの発生源が急増する。
レジ袋などプラスチックを使わない生活を心がけ、リサイクルも進めて生産量を抑える。さらに、海はもちろん、川や屋外にプラスチックごみを捨てない。
レジ袋の使用数は、エコバッグが普及しているデンマーク、フィンランドは1人年間4枚以下だが、日本では200枚以上と言われる。各国に問題意識の共有と対策の強化を働きかけるうえでも、私たち自身が国内での発生を減らすよう努める必要がある。