研究現場から見たAI

AIの進化と歴史 -ロボット棋士の勝利を支えた「数理最適化」とは

松田雄馬 2016年04月05日 07時00分

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 今、情報科学において重要な技術のうちの1つとして「人工知能」(AI)が多くの場で議論されている。前回は、人工知能というものが一体何か、ビジネスや社会とどう関わっていくのかについて、コンピュータの歴史を紐解くことによって解説した。

 そこでは、「人工知能というものが一体何なのかを定義すること自体が不可能」であるということ、機械は人間と違って「与えられた問題を与えられた方法で解くこと」しかできないということ、「問題を設定して解決することは人間にのみ与えられた能力であること」について示した。


 今回は、前回、“人工知能”や「機械」と表現していたものを、それらの具体的な中身である「数理最適化」という方法を解説することによって、より深く理解し、人間にのみ与えられた能力である「解くべき問題を設定」する能力と、「解決する手法を決める」能力を、どのような考え方をすれば実施できるのかについて説明する。

 囲碁も将棋も「数理最適化問題」

 前回から1カ月、ついに囲碁で人間に勝利するコンピュータが登場した。

 囲碁は、チェスや将棋と異なり、その手の数が桁違いに膨大であり、かつルールも複雑であるため、まだまだ人間に敵うコンピュータはできないと考えられてきた。だからこそ、予想以上の「人工知能」の進化に、人間社会の議論がより紛糾するようになったのである。

 一部の専門家は「自分の力で学習する汎用人工知能への可能性が広がった」と言及しており、「人工知能」の実現への期待と不安が、実際の研究現場と乖離して、紛糾するようになってしまっている。

 もちろん、囲碁で人間を勝利するコンピュータが登場したということの意義は大きい。多くのコンピュータ科学者の不断の努力の積み重ねであり、コンピュータ科学の歴史において非常に重要な「発明」であろう。だからこそ、こうしたコンピュータ科学者のなした研究成果を、「人工知能」という言葉でブラックボックス化して議論だけを紛糾させるのではなく、概念的に中身を理解したうえでの議論すべきと考える。

 実は、囲碁や将棋といったゲームにおいて、勝利への「道」を見つける方法を、コンピュータ科学の世界では数理最適化と言われる。この数理最適化とは何なのか、概念的に説明することで、人工知能への理解を深めていきたい。

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