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ジカ熱 感染拡大防止に全力を

 ジカ熱と呼ばれるウイルス感染症がブラジルを中心に中南米諸国で爆発的に広がっている。デング熱と同様、主にネッタイシマカによって媒介される感染症で、発熱、発疹、結膜炎などが生じるが、症状はさほど重くない。

     問題は、妊婦が感染した場合に脳の発達に遅れが出る小頭症の子どもが生まれる可能性のあることだ。因果関係が確定しているわけではないが、ブラジルでは感染者の急増と歩調をあわせるように、4000人近い小頭症の子どもが生まれているという。妊娠延期を国民に呼びかける国も出てきた。

     事態は深刻であり、感染回避や感染拡大の防止に国際社会が全力で取り組まなくてはならない。

     ジカウイルスは1947年にアフリカのサルで確認され、52年にウガンダとタンザニアで人への感染が確認された。アフリカや太平洋諸国などで流行が起きたことはあるが、公衆衛生上の大きな脅威とは考えられてこなかった。

     ところが、昨年5月にブラジルで患者が確認されて以来、感染は中南米の20カ国以上に急速に広がった。今後1年で300万〜400万人が感染する恐れがあるとの見方もある。感染者にまひを引き起こす「ギラン・バレー症候群」も因果関係が疑われている。米国や欧州でも流行地からの帰国者に感染者が出ている。対策は急務だ。

     ジカ熱にはワクチンも特定の治療薬もいまのところない。もっとも重要な感染防止策は流行地で蚊に刺されないようにすることだ。長袖や長ズボンで体を覆い、昆虫忌避剤などを使うことが必要だ。

     蚊の発生源を断つことも重要だ。ごくわずかな水でもボウフラは生育できるので、こまめに水たまりを空にすることが求められる。

     妊婦が流行地に出かけるかどうかには特に慎重な判断が必要だ。米疾病対策センターや日本の国立感染症研究所は妊婦の流行地への渡航を当面控えた方がよいとの判断を示している。そうした情報に注意を払ってほしい。ブラジルでは今年、夏季五輪が開催される。旅行を計画している人に十分な情報を提供することも欠かせない。

     日本では海外で感染した人が帰国後にジカ熱と診断された例はあるが、国内での発生例はない。ただ、デング熱同様、日本に生息するヒトスジシマカもジカウイルスを媒介できるため、今後、日本での感染が起きる可能性は否定できない。早めに対応を考えておくべきだ。

     今や熱帯の感染症が日本で発生しても不思議のない時代だ。さまざまな感染症への警戒を怠らないようにしたい。

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