(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年3月30日付)

外交的には成功のAIIB、問われる中国の運営能力

中国・北京の人民大会堂にはためく中国国旗(2012年11月13日撮影)。(c)AFP/Mark RALSTON〔AFPBB News

  中国が試みている経済的な移行は、中国自身のみならず世界のほかの国々にも大きな影響を及ぼす。短期的には、中国の経済活動の急減速かもしれない現象からの波及を管理することが課題になる。長期的には、中国という金融大国の世界経済への統合にいかに対処するかが課題になる。だが実際には、短期的な出来事が長期的に何が起こるかも決めることになるだろう。

 インドがまとめた最新の「エコノミック・サーベイ」には、示唆に富んだ危機の分類法が提示されている。

 これによれば、危機が外国にもたらす衝撃は、1)その危機はシステム上重要な国で起こっているのかどうか、2)政府の借り入れの結果なのか、それとも民間の借り入れの結果なのか、3)危機が発生した国の通貨は上昇しているのか、それとも下落しているのか、という3点によって決まる。

 この分析と中国との間にどんな関係があるのか。その答えは、中国はシステム上重要な国であり、すでに額が大きく、なお急増する企業部門の債務に頭を悩ませている国だからだ、というものになる。この状況は、突然の投資急減と急激な人民元安につながっていくかもしれない。

 そのような急減速があり得ないということは全くない。究極的には持続しえない企業債務の増加と、極めて高い投資率に需要が依存している状況とが重なれば、そこに生じるのは脆弱性だ。

 経済成長率が低下して年率7%を下回るようになった以上、国内総生産(GDP)の45%を投資が占める状況は、もはや経済の理にかなわない。また、この投資の3分の2近くは民間セクターによるものだ。このため、市場の力によって痛みを伴う調整を強いられるかもしれない。

 政府の対応は2種類考えられるだろう。1つは、西側諸国の金融危機の際に見られたような財政赤字の大幅拡大。もう1つは、より積極的な金融政策だ。しかし、為替レートの下落は、国内のデフレ圧力を打ち消す要因としても歓迎されるかもしれない。