日韓の議員外交 先細るパイプが心配だ
韓国では13日に総選挙の投票が行われる。与野党の候補者を見ると日韓の政治家の間に太いパイプがあった時代は遠くなったことを改めて感じさせられる。
韓日議員連盟会長代行を務めてきた金泰煥(キムテファン)議員は与党セヌリ党の公認を得られず、無所属での立候補を余儀なくされた。セヌリ党では、日本での勤務経験の長い外交官出身の沈允肇(シムユンジョ)議員や日本通で知られた朴振(パクチン)前議員らも公認されず、出馬を断念した。
いずれも日本語が堪能で、日本との関係に心を砕いてきた政治家たちだ。韓国の政界ではこれまでも知日派といえる大物政治家の引退が続いてきた。今回の総選挙で、知日派の退潮は決定的なものとなりそうだ。
かつての韓国で政財界を主導したのは日本の植民地だった時代に教育を受けた人々だった。戦後70年を経て世代が変わり、日本が特別な存在でなくなったのは当然だろう。
日本側でも、戦前を知る世代の引退に伴って関心は低下している。日韓議員連盟に依然として多くの有力議員が参加してはいるものの、活動は低迷するようになって久しい。
外交を担うのは政府である。とはいえ、非公式な形で互いの考えを知り、友好的な雰囲気を作るという議員外交の役割も小さくはない。
1990年代までは歴史問題などで政府間の関係が険悪化した時には関係改善のために汗をかく大物議員が双方にいた。ところが最近は、竹島問題や慰安婦問題を巡って関係悪化が止まらなくても誰も動こうとしない。
日韓は互いに努力しなければ相手を理解できなくなっている。
政治の責任は特に重い。
日韓関係はここ数年、悪化し続けた。その過程で、安倍晋三首相や朴槿恵(パククネ)大統領、李明博(イミョンバク)前大統領という指導者の言動が相手国の国民感情を傷つけてきた。
本来ならば、そうした時にこそ議員外交の役割が期待される。それなのに、相手国を挑発するような姿勢を取る議員が両国で目立った。偏狭なナショナリズムをあおるようでは無責任のそしりを免れない。そうした行動は自国の国益をも損なうことを自覚すべきである。
日韓は、北朝鮮の脅威への対処という重要な問題で利害を共有している。気候変動やテロ対策、中国を含めた広域の環境問題など隣人として協力すべきことも多い。社会構造の似通った国として、少子化をはじめとする共通の課題で知恵を出しあうこともできる。
両国の政治家たちに、新しい時代に合った重層的な関係を築く努力を求めたい。