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税収の増加 健全化の手を緩めるな

 企業の好業績を背景に税収が増えており、政府は増加分をどう使うかの検討に入った。

     安倍晋三首相は「1億総活躍社会」関連政策への活用に意欲を示している。夏の参院選で「アベノミクスの成果を国民に分配する」という姿勢をアピールする思惑もある。

     しかし、内閣府の最新の試算によると、財政見通しは一段と悪化した。税収増を歳出拡大につぎ込むと、健全化に逆行しかねない。財政規律を緩める余裕はないはずだ。

     2016年度予算案の税収見通しは57・6兆円と25年ぶりの高水準だ。第2次安倍政権が発足する前の11年度より15兆円近く増加した。

     経済財政諮問会議の民間議員は、1億総活躍関連の子育てや介護支援に充てることを提言した。「少子化対策の拡充などで成長を強化すれば、税収はさらに増え、財政健全化にも役立つ」との考えだ。

     税収増を効果的な政策に絞って投じるのなら意味がある。しかし、ばらまきに使ってしまえば、成長の底上げに結びつかず、さらなる税収増につながる保証もない。

     政府は税収増を活用した15年度補正予算の柱として、低所得の高齢者らへの3万円の給付金支給を計上した。だが、ばらまきで効果も限定的とみられている。今回も選挙目当ての大盤振る舞いになりかねない。

     内閣府の試算では、国と地方の基礎的財政収支は、15年度に16・6兆円の赤字だが、20年度も6・5兆円の赤字が残り、昨年7月の試算から0・3兆円悪化した。政府は「20年度の黒字化」を目標にしているが、道のりはさらに険しくなった。

     しかも試算の前提は、国内総生産(GDP)の成長率が名目3%、実質2%以上で推移することだ。抜本的な歳出抑制は含まず、赤字圧縮は高成長に伴う税収増頼みだ。

     だが、税収は景気に左右されやすい。中国の景気減速などで下振れする恐れがある。不安定な財源に頼って歳出を拡大し、赤字は減らそうという姿勢は都合が良すぎる。

     財政健全化には歳出抑制が欠かせない。肥大化する社会保障費への切り込みが必要だ。1億総活躍関連で必要な子育てなどの財源は、裕福な高齢者に負担増を求めるなどして工面することを検討すべきだ。

     財政見通しが悪化したのは、17年4月の消費増税時に導入する軽減税率の財源が固まっていないためだ。政府・与党には「税収増を穴埋めに充てればいい」との意見がある。

     しかし、政府・与党が合意した「安定財源の確保」と矛盾するのは明らかだ。軽減税率は低所得者対策として不可欠であり、歳出見直しなどで恒久的な財源を探すべきだ。

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