i can't find my keys
俺が捨てられたのは、数えで三つほどの頃だろうか。
親の顔も自分の名前も知らない。
今となってはなぜ捨てられたかなど瑣末なことだ。
「タカ」
物思いに耽っていると背後から名前を呼ばれた。
「カムイか」
考え事をしていたとは言え、背後からの気配を感じ取れなかった。
「また考え事が?」
カムイは腕を組み、片眉を吊り上げる。
「いや…なんでもない」
「では、お前ほどの奴がなぜ背後からの気配を察知できないのだ?」
カムイは咎めるような声音ではなく、純粋な疑問かのように気さくな笑顔で問い掛けてくる。続けて
「考え事をするのはいいが、作戦に差し障りのないようにな」
カムイは笑顔を絶やさないが、こいつはいつも目が笑っていない。
俺たちのいる村は、一見するとどこにでもある村で、農民が耕作をして暮らしている。
俺もその例に漏れず、畑を一つ任されている。
しかし、これはあくまで仮の姿である。
本当の顔は世を忍ぶ者…『忍者』である。
それは、風の強い日だった。
村長であり、忍の師からの特命を受けることとなった。
「タカよ。お前の活躍はカムイからもよう聞いておる。お前も一人前と言っていいであろう。今回の大任。お前に任す」
「はっ!有難き幸せ!この不肖タカ!師の名誉の為、必ずやこの任、成功させてみせます!」
「ふふ、不肖とはお前も謙虚よの。カムイを連れて行くがよい。あやつがいれば万が一の事もないであろう」
素直に嬉しかった。
あの厳しい師が俺を認めてくれたのだ。
その後詳しい任務内容を聞いていくと、今回の任務は敵国の大名の首を獲ることであった。
暗殺など取るに足らないと思ったのだがその大名というのが大物であり、我が国のお偉いさん方も手を出しあぐねているらしい。
その国の上層部から直々に依頼が来たということだ。
任務遂行当日。
「今回の任務に失敗は許されんな」
カムイはいつもの笑みをその顔に貼り付け語りかけてくる。
俺はここにきて何故だか長年思っていた疑問をぶつけてみた。
「以前より思っていたが、何故お前の笑みは目が笑っていないんだ?」
目を細めて疑うような顔で問いかける。
「…そうか?職業病かもな。ははは!」
「ふっ」
一瞬の間が気になったが、誤魔化すように笑うカムイを鼻で笑ってみせた。
「じゃあ、行くか」
村を出たのは夕暮れ時。
此処からは忍の時間とばかりに太陽が地平線に飲まれていった。
森の木々を軽い身のこなしで避けながら目的地まで疾駆する。
忍の村は敵国と自国の境にあるため、目的地まではそう遠くはなかった。
目的地に着いた時は子の刻を少し過ぎた頃だった。
満月の月明かりが宵の闇を明るく照らしていた。
城内へ侵入し、ターゲットの寝室に行くまでの警備は不思議と手薄だった。警備の者を流れる動作で一撃のうちに沈めていく。
寝室に着くと敵大名は無防備にも静かに寝ている。
俺は静かにスイッチブレードを構えた…。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。