甘利氏辞任 説得力を欠いた釈明だ
「政治とカネ」がまた、内閣を直撃した。甘利明経済再生担当相が口利きの見返りなどで自身や秘書が現金を受領したとされる疑惑をめぐり、辞任を表明した。アベノミクスの経済政策や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の司令塔だった政権の要を失った影響は大きい。
甘利氏は記者会見で自らの2度にわたる現金授受や秘書による300万円のヤミ献金受領を認めており、辞任は当然だ。だが、説明にはなお多くの疑問があり、説得力を欠く。国会は事態の解明を急ぐべきだ。
「閣僚としてのポストは重いが、自分を律することはもっと重い」。甘利氏は記者会見でこう述べ、「けじめ」と引き際を強調した。だが、本当にそうだろうか。
疑惑は千葉県白井市の建設会社側が「都市再生機構」(UR)とのトラブル解決の口利き依頼や見返りとして、甘利氏や秘書に合計約1200万円を提供したというものだ。建設会社の総務担当者の告発に基づき「週刊文春」が報じた。
甘利氏は2013年11月に大臣室で50万円、14年2月にも地元事務所で50万円を受け取ったとの指摘に最初は「記憶があいまいだ」と語っていた。
記者会見で甘利氏は2度の授受を認め、政治資金として適正処理を指示したと説明した。「紙袋に入ったのし袋」「菓子折りの入った紙袋と封筒」など、甘利氏が認めたのは旧態依然とした不明朗な金銭の授受だ。甘利氏は2度目の現金授受の際、総務担当者と産廃をめぐるトラブルが話題になったことも認めた。時期の違う政治献金を一括して処理したとする説明は不自然で、違法の疑いもある。
事務所や秘書の関与に至っては、あきれるような実態である。甘利氏は総務担当者から秘書が500万円を受領していたことを認め、300万円は秘書が使い込んでいたと説明した。秘書が総務担当者から飲食などの接待を受けていたことも認めた。自ら進んでけじめをつけたと言うよりは、辞任に追い込まれたというのが実態だろう。
URからは建設会社に多額の補償金が支払われている。政治家や秘書が口利きで報酬を得ることを禁じる「あっせん利得処罰法」に違反する疑いも指摘されている。秘書はUR側に係争の状況を確認したことは認めたものの、働きかけは否定したとされるが、徹底した究明が必要だ。
「政治とカネ」をめぐる閣僚辞任は第2次安倍内閣発足から4人目だ。安倍晋三首相は甘利氏の続投を容認するような答弁をしていたが、これでは事態の認識が問われる。首相の責任は重大である。