レスボス島=喜田尚
2016年4月4日23時30分
ギリシャ政府は4日、トルコに向けた難民や移民の送還を始めた。3月に欧州連合(EU)とトルコで合意した難民抑制策のスタートだ。未曽有の大量流入に直面した欧州の難民対策は転換点を迎えた。ただ密航の流れは止まっていない。
現在、ギリシャの島部には5千人以上が留め置かれている。ギリシャ政府によると、この日はパキスタンなどの出身の人たち202人が東部レスボス島やヒオス島から旅客船3隻でトルコ西部ディキリに到着した。混乱が予想され、政府はこの日の送還計画を事前には一切明らかにしなかった。
レスボス島では、人々の移動は、同日未明から始められた。関係者によると、午前3時すぎに島内の収容施設からバス数台が出発した。港では、欧州対外国境管理協力機関(FRONTEX)の係員とみられる私服の男性が1人ずつ付き添い、乗船を促した。船は日の出直後に出航。港では抗議活動もあった。
EUとトルコは3月18日に「難民送還」で合意した。対象は、合意が発効した3月20日以降にトルコからギリシャへ密航した移民や難民のうち、ギリシャで難民申請しないか、しても受け入れが認められない人たち。送還する人にシリア人難民が含まれていた場合、EU各国は、トルコ国内にとどまる別のシリア人難民を、同じ人数だけ「第三国定住」で受け入れる。EUはトルコのシリア難民向け基金に資金援助する。
4日に送還された人の中にはシリア難民はいなかった模様だが、引き換えの「第三国定住」は先行して進められた。計40人以上のシリア人難民がこの日、トルコから定住先とされたドイツとフィンランドに空路で到着する。
EUは今回の送還を、(密航などの)「不正常な移動」を終わらせるための「一時的、例外的な措置」としている。しかし密航の動きは止まっておらず、ギリシャ・メディアによると、この日も送還船の出航直前までの24時間で、送還された人数を上回る計339人が密航船でギリシャ側に到着した。(レスボス島=喜田尚)
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朝日新聞国際報道部
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