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琴奨菊の優勝 切磋琢磨で満員御礼を

 遅咲きの31歳が日本出身力士として10年ぶりの優勝を果たした。

     大相撲初場所で大関・琴奨菊(福岡県柳川市出身、佐渡ケ嶽部屋)が度重なるけがを乗り越え、初の栄冠に輝いた。長らく外国出身力士が優勝を続けていた角界にあって日本出身力士が賜杯を抱くのは2006年初場所の栃東以来だ。

     14勝1敗。モンゴル出身の白鵬、日馬富士、鶴竜の3横綱を倒しての優勝は文句のつけようがない。優勝インタビューで両親をはじめ支えてくれた人たちへの感謝の言葉を繰り返したのは苦労人らしく、多くの人の琴線に触れたのではないか。

     生中継したNHKの平均視聴率は関東地区で24・0%を記録した。昨年11月の九州場所千秋楽の8・7%から大幅に伸びた。琴奨菊の優勝がかかっていたことが大きな要因とみられる。千秋楽、東京都内のある家電製品売り場に設置されたテレビの前では琴奨菊が優勝を決めた瞬間、拍手と歓声がわき起こる場面もあったという。日本出身力士の優勝を待ち望んでいた人たちが少なくなかったことがうかがえる。

     モンゴルをはじめ外国出身力士らに押され、日本出身力士は長い間、優勝から遠ざかっていた。遠藤ら期待の若手は伸び悩んでいる。判官びいきからか、日本出身力士を倒した外国出身力士にブーイングが浴びせられたこともあった。

     近年の相撲界は外国出身力士によって支えられてきた。この10年間、角界は時津風部屋の力士暴行死事件、相撲賭博事件、八百長問題など不祥事が相次いだ。相撲人気は地に落ち、存続の危機がささやかれたこの時期、土俵を盛り上げたのは、大鵬の優勝記録を更新し続けている白鵬らモンゴル出身力士だった。

     日本相撲協会は以前から海外巡業などで世界への相撲道の普及を図っている。相撲界での成功を夢見て、海外からの入門者は後を絶たない。今場所の番付を見れば幕内42人のうち3分の1を超える15人を外国出身者が占めている。彼らの存在なしにもはや「国技」としての大相撲は成り立たない。

     昨年11月に亡くなった北の湖前理事長は生前、「土俵の充実」を訴えていた。このところ場所に足を運ぶ人が増え、「満員御礼」が続いている。力士たちが醸し出す緊張感が客席に伝わっているためだろう。

     相撲人気が回復しつつある中での琴奨菊の優勝は、モンゴル出身力士にかつての勢いが見られない中、戦国時代の幕開けを象徴しているとの指摘もある。相撲という伝統文化の継承者として、出身国に関係なく、切磋琢磨(せっさたくま)することで相撲人気を確たるものにしてほしい。

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