銀行の献金復活 数々の疑問がつきない
大手銀行が18年ぶりに自民党への政治献金を復活させた。経団連が2014年から献金の呼びかけを再開し、自民党と大企業との献金パイプが復活した流れに沿ったものとみられる。経団連の対応についても、企業・団体献金を制限する狙いのもとで、税金を使った政党交付金が導入された点をふまえ、問題だと批判してきたが、大手銀行の場合はそれ以上に疑問が多い。
三菱UFJ、みずほ、三井住友の3大銀行グループは昨年末、それぞれ約2000万円を自民党の政治資金団体「国民政治協会」に提供した。「企業の社会貢献の一環」と説明しているが、特定政党への寄付が社会全体に役立つという考えは理解しがたい。
各銀行は、1998年から政治献金を見合わせてきた。金融危機で破綻の恐れもある中、国からの救済措置として公的資金(税金)による資本増強策を受けたからだ。その公的資金をすべて返済し、業績も大幅改善させた結果、「けじめはついた」と判断したようだ。
しかしそれは、銀行業界で総額12兆円超、3大銀行で6兆円強の税金を受け取り、不良債権処理に伴って法人税が免除されたことによる業績改善である。
経済全体を支える国民生活に欠かせない存在で、公益性が高いと認められたための「特別扱い」だった。その立場は変わっていないにもかかわらず、特定政党への献金復活は納得を得られないだろう。
さらに3大銀行は、融資という形で自民党の財政基盤を支えている。政治資金収支報告書(14年分)によれば、融資額は三菱UFJが31億6250万円、みずほが20億7500万円、三井住友が20億7500万円である。
復活させた献金は、返済のための資金を銀行が提供したとみることもできるため、事実上の借金の一部免除ではないかとの指摘もある。
銀行の利益は、集めた預金を貸し出したり運用したりすることで生まれる。それが献金に回されたのでは、ほとんど金利を得られていない預金者や、高い金利の融資を返済している中小企業などの反発を招いても仕方あるまい。
前会長らが逮捕された日本歯科医師連盟の献金事件や、先週に浮上した甘利明経済再生担当相をめぐる現金授受疑惑など、安倍政権下でも「政治とカネ」にまつわる問題が後を絶たない。
政治がゆがめられるのではないか、との疑念を持たれる企業献金が大手を振るようになれば、一層の政治不信を招く。そして、顧客や預金者の反発が企業活動にも悪影響を及ぼすことは言うまでもない。