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16春闘スタート 底上げに向けた交渉を

 2016年の春闘が事実上始まった。経団連は昨年を上回る「年収ベースでの賃上げ」を検討するよう企業に求めたが、昨年と違い、すべての従業員の賃金水準を一律に引き上げるベースアップ(ベア)については慎重な姿勢を示した。連合は「あくまで月給の引き上げにこだわる」とし、ベアを強く求めている。

     ベアは、働く人やその家族の生活水準を引き上げるためのもので、個人消費の拡大にもつながる。業績がよい企業は、確実にベアを実施すべきだ。

     しかし、大手自動車や電機メーカーなどの労組が加盟し春闘のリード役を担う金属労協がベア3000円以上、3期連続で最高益を見込むトヨタ自動車系の全トヨタ労組連合会もベア3000円以上の要求にとどまり、いずれも前年の半額程度という水準の低さだ。「デフレ脱却と経済の好循環実現を目指す闘争」という連合の主張との落差は否めない。

     世界金融市場の混乱などが影響しているのはわかるが、経団連が3年連続で傘下の企業に賃上げを求めているのと比べても、労組側の要求は控えめに過ぎないか。

     このところ官邸主導の「官製春闘」が続き、賃上げの旗振り役を奪われている労組にとって、組合員の要求に応えつつ、どのように社会的役割を果たせるかが問われている。

     ここ2年の春闘では中小企業の賃上げが大企業に追いつかず、企業間の格差が広がっている。約2400団体の中小製造業の労組で構成される「ものづくり産業労組」は昨年の春闘で9000円のベアを要求したが、実際にベアを実施した企業は4割にとどまった。

     このため連合はこれまでの大手自動車・電機メーカー主導の春闘から、中小企業や非正規雇用者の底上げによる「ボトムアップ」型へと転換する考えを示している。中小企業で働く人は、雇用労働者全体の7割を占める。賃上げの裾野を広げ、多くの雇用労働者の可処分所得を増やすことが内需拡大と景気回復の好循環をもたらすというのである。

     非正規雇用の賃金や待遇については、本来は政府が最低賃金の引き上げや「同一労働・同一賃金」を実現する政策を行って改善すべき課題ではある。ただ、春闘は正社員の賃上げだけでなく、労働者全体の待遇改善について交渉する場でもある。

     今春闘では、中小企業や非正規雇用の賃金の底上げにつながる具体的な成果を期待したい。雇用労働者のうち労組に加入している人は、今や17%しかない。大企業の労組に加入している正社員しか果実が得られないようでは、春闘の存在意義はますます低下するだろう。

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