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建設石綿判決 国は新たな救済制度を

 建設現場で建材に含まれたアスベスト(石綿)を吸って中皮腫や肺がんなどの健康被害を受けたとして元建設作業員らが損害賠償を求めた裁判で、大阪地裁は国の責任を認めて賠償を命じた。

     全国6地裁で起こされた同種訴訟では四つ目の判決で、国の責任を認めたのは東京、福岡地裁に続いて3例目となる。救済立法の検討を求めた判決もある。政府と国会は重く受け止めて、新たな救済制度の創設に動くべきだ。

     耐火性に優れた石綿は高度成長期の1960年代以降、大量に輸入され、多くが建材に使われた。建設業の被害が最も大きいが、現場を渡り歩く大工や内装工らが発症しても特定の雇用主の責任を問いにくい。そのため労働者と遺族約740人が国と建材メーカーを相手に提訴した。

     国は75年の規則改正までに石綿の危険性を認識できたのに、建設現場で有効な防じんマスクの着用を罰則付きで義務化しなかったのは不合理で違法だ。判決はそう結論づけた。

     当時、建設事業者にマスクの備え付けを義務づけていたが、使用は広まらなかった。現場の実態に即した実効性ある対策で労働者の安全を守る立場なのに、国の規制は不十分だったという厳しい指摘だ。

     一方、現場でどの建材が使われたのか特定できていないとして、これまでの判決と同様、建材メーカーの法的責任は否定した。厳格な立証を求められる原告側にとってハードルは高い。2012年の東京地裁判決は「メーカーが責任を負わなくてもよいのか疑問がある」と述べ、立法による解決を促した。これに政治が応える番ではないか。

     大阪府南部地域の石綿関連工場の元従業員らが起こした訴訟では最高裁が国の責任を認め、厚生労働省は被害者への賠償を始めた。建設作業員は「別問題」として訴訟を続けているが、患者の高齢化が進み、救済が急がれる現状は同じである。

     06年に施行された石綿健康被害救済法は金額や範囲が不十分とされ、原告の支援者は国と関係企業による補償基金の創設を求めている。地裁レベルとはいえ、国の責任を認める司法判断の流れも定着しつつある。法的に個人事業者となる「一人親方」など賠償を認められなかった人を含め、より幅広い救済の枠組みを検討してもらいたい。

     石綿は04年に原則使用禁止となったが、中皮腫は発症までの潜伏期間が数十年と長く、被害はさらに増える見込みだ。石綿を使った建物は全国に約280万棟残り、解体作業が今後ピークを迎える。被害を拡大させないため行政と業者は飛散防止策を徹底しなければならない。

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