あんたひとりでもめげちゃダメ! 男の子は孤独に耐えて強くなるものだから。 もし誰か他にいるなら、それはよかったわ。男の子は人間の中で磨かれるものだから。
ー「氷菓」米澤穂信
どうも、ジョンです!
今日の法事のようなものの最中、親戚から逃れるため屋上に続く明かりのない階段で読書していたら読み終えてしまった「真実の10メートル手前」の感想を投稿します。
「真実の10メートル手前」とは?
山本周五郎賞などを受賞された米澤穂信さんの短編集になります。米澤穂信さんと言えば僕の好きな作家の一人です。おすすめの作品は数ありますが、山本周五郎賞受賞作である「満願」や、アニメ化もされた「氷菓」から始まる<古典部シリーズ>をここではおすすめしておきます。
著者には他のシリーズもあるのですが、今回紹介している作品は太刀洗万智シリーズということになるでしょう。「さよなら妖精」で登場した女の子が「探偵役」をつとめる一連の作品群であり、他には「王とサーカス」があります。さよなら妖精以外では彼女は大人であり記者としての働いていますが、その記者という役目が彼女の性格付けに深みをもたせていると言えるでしょう。
さてもちろん、これらの背景を知っていれば作品のつながりを楽しむことができます。が、知らなければ楽しめないという不親切な作りにはなっていませんのでご安心を。
言い忘れていましたが、米澤穂信さんはミステリ作家なので、作品はミステリに分類されます。
この本に収録されている短編タイトルは、
- 真実の10メートル手前
- 正義漢
- 恋累心中
- 名を刻む死
- ナイフを失われた思い出の中に
- 綱渡りの成功例
です。表題作がトップにくるのは個人的に珍しいと思うのですが、あとがきによれば「王とサーカス」より時系列的には前の話で長編に収録されるはずだったのですが、どちらかと言えば短編としてまとまっているということでこちらに入ったようですね。
感想
まず表題作を読んで感じたのは「思ったよりあっさりしてるな」でした。前述のとおり、これが長編の入口として書かれていたと考えれば、さもありなんと言えます。
とはいえ、他の短編も淡々とした印象が拭えません。取りも直さず、主人公(しかし彼女の視点で語られる物語はない)のクールさによるものだと僕は考えています。
が、感情的な彼女も見ることができました。「ナイフを失われた思い出の中に」で、です。さよなら妖精に出てくるマリヤ・ヨヴァノヴィチの、兄が来日して太刀洗と行動を共にします。記者として仕事をする太刀洗を見たヨヴァノヴィチ氏は「なぜ自分の仕事を正当だと思えるのか」といった問をし、太刀洗は……まあ読んでみてください。
すごく良かったのですが、どちらかを選べと言われれば「満願」を選ぶでしょう。が、キャラに深みを持たせるという点では成功していると思います。
しかしながら他のレビューを読ませていただくと、自分もまだまだ文章を読む力が足りないなと思わざるを得ません。
たとえばこのサイト↓
では、「真実の10メートル手前」と「綱渡りの成功例」には呼応の関係があるとおっしゃっていて、僕はその慧眼に感服するばかりでした。
改めて他作品もあわせて読み深めて行きたいと思います。
その際に気づきがあれば追記するかもしれません。
あなたもよろしければ読んでみてくださいね。
では!