(cache) 相次ぐ新聞の夕刊撤退 ネット時代の夕刊のあり方とは? | THE PAGE(ザ・ページ)

 山梨県内で発行されている『朝日新聞』と『毎日新聞』の夕刊が今年3月31日付けでなくなった。いずれも終了の理由について、インターネットなど生活様式の変化によって夕刊読者が減っていることを挙げている。しかし、もともと同県内で夕刊が読まれていなかったという事情もあるだろう。同県内の動向をきっかけに、新聞紙の存在意義を考える。

夕刊廃止の理由は?

朝日新聞と日本経済新聞(4月2日付)夕刊。土曜日は、比較的ニュースが少ない。

 取材に対し、朝日新聞社は「山梨県では夕刊の購読者が減っているから」といい、その理由を「ライフスタイルの変化の中で夕刊が読まれなくなっている」とした。毎日新聞社は、「通常配達を終了するのは、夕刊の購読者数が生活様式の変化やインターネットの普及などで減少しているため」としている。

 新聞販売で、朝刊と夕刊を別々に読者に届ける商品を「セット版」といい、夕刊の内容の一部を翌日の朝刊に盛り込んで届ける商品を「統合版」と呼んでいる。夕刊がなくなるため、朝日新聞も毎日新聞も山梨県内で配る新聞は、4月1日から「統合版」となったが、毎日新聞社は「引き続き夕刊を希望する読者には、翌日の朝刊と一緒に配達します」とした。

そもそも山梨県で夕刊は読まれていなかった

山梨県内の夕刊発行部数

 確かに生活様式の変化は理由ではあろうが、そもそも山梨県内の夕刊部数はどうだったのか。他紙も含めて見てみよう。

 全国最大の発行部数を誇る読売新聞でさえ714部(朝刊38,482部)である。朝日新聞が1,289部(朝刊27,249部)、日本経済新聞が617部(朝刊11,775部)、毎日新聞が420部(朝刊9,816部)となっている(部数は『2016 読売新聞媒体資料』より)。山梨県の人口は83万2961人であることを考えると、もともと山梨県内では夕刊は読まれていないと言えるのだ。ちなみに、山梨日日新聞の部数は20万5089部である。

 しかも夕刊が読まれているのは、甲府市の中心部、大月市の一部であり、その他の地域には朝刊だけが配られている。読売新聞は朝刊だけの読者むけの新聞と朝夕刊セットの読者むけの新聞を別々に印刷しているが、朝日新聞と毎日新聞はセット地域向けの紙面をそのまま配っていた。

 以前はこの両紙も印刷を分けていたが、毎日は2000年代後半、朝日は2011年から、そういった対応をやめた。なお、日本経済新聞は統合版を配布している。

 そのため、同県内で発行されている夕刊に山梨県関連の記事が掲載されると、その後の朝刊の山梨県版の記事には「(一部地域既報)」と記された記事が掲載される。

 今回の朝日・毎日両紙の夕刊撤退は、山梨県の現実に見合った措置といえよう。山梨日日新聞をメインに配達し、毎日新聞も配達、さらには朝日新聞や日本経済新聞も各新聞販売店と共同で配達している甲府市の新聞販売店・ニュースコムによると、夕刊の配達は「負担になっていない」という。配る部数があまりにも少なく、それほど大変ではない。つまり、その程度にしか夕刊が読まれていないのだ。