英国の欧州連合(EU)残留の是非を巡る6月23日の国民投票を前に行われた世論調査で、先行きの不透明さが明らかになった。依然として接戦で投票結果の予測は難しい。フィナンシャル・タイムズ紙の最新の世論調査では、残留支持が離脱支持を3ポイント上回るだけだ。電話調査では残留支持が多いなど、調査方法による違いも大きく影響しているように見える。
さまざまな世論調査が生んでいる不透明さの中、明白で一貫した調査結果が一つある。国民投票でどちらに投票するかを予測するための信頼できる判断材料は年齢であることだ。年齢が上がるほど、英国のEU離脱(ブレグジット)に賛成する傾向が強く、年齢が下がるほど残留を支持する傾向が強い。調査会社ユーガブの最近の世論調査によると、18~29歳までの回答者の63%がEU残留を支持し、60歳以上の56%が離脱を支持しているという。高齢者が投票する可能性は若者と比べて格段に高いことを考えると、年齢の違いによる支持の差はEU離脱派に大きく有利に働く。
英国では住宅価格が高騰する一方で賃金は低迷したままで、近年、若者が不当な扱いを受けているという見方が定着している。EU離脱の影響の中で生きていかなければならない若者の願いに反して英国民が今EU離脱を選べば、世代間の不公平さの新たな一例と見なされるのは当然だ。
同様の世代に関する議論は、英国からの独立について2014年にスコットランドで行われた住民投票でもあった。当時、スコットランドの若者は高齢者と比べて独立を支持する傾向が強かった。だが、英国のEU離脱を巡る国民投票とスコットランドの住民投票には重大な違いがある。あまり遠くない将来、スコットランドで再び住民投票が行われ、スコットランドの若者は改めて独立に投票する機会を持てる可能性が高いことだ。これに対し、英国がEU離脱を選べば、その後再び投票が行われて簡単に結果が翻る可能性は非常に低いと思われる。英国のEU離脱については、離脱してすぐまた戻るという選択肢は一切存在しない。
■現政権、若者票獲得になぜか無関心
高齢者は大ブリテンという考えへの愛着がより強いが、スコットランド人の若者は連合王国からの離脱を支持する傾向が強い。そして、英国の若者は一般的に、英国の国家主権への執着が弱い。
キャメロン政権は、英国のEU残留に向けた活動で、若者票獲得の必要性に対してなぜか無関心だ。スコットランドの住民投票では、16~18歳の若者に投票権を与えた。だが、EU離脱の是非を問う国民投票にはそうした規定は設けられていない。離脱の賛否が僅差になれば、若者を中心に20万人が集まるグラストンベリーのロックフェスティバルの開催期間中に国民投票が行われることはEU残留票を減らしかねないとさえ心配する向きもある。
投票行動が年齢層で違う理由ははっきりしない。若者は国家主権についての議論に突き動かされることが少ないからかもしれない。また、移民や国境警備の問題が絡む投票で重大な判断材料となる多文化社会について、若者は高齢者より居心地良く思っているからかもしれない。また、5億人が住む28カ国からなる域内を自由に移動し、働く機会を若者は特に評価しているのかもしれない。英国のEU離脱はこうした機会を著しく狭め、恐らく、英国人が欧州で働くのにビザが必要だった時代に逆戻りさせるだろう。視野や機会が狭まることは、若者と高齢者のどちらにも影響するはずだ。
(2016年4月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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