電氣アジール日録

2016-04-04 少子化の真の原因と解決策

みんな勘違いしている少子化の原因

このブログで時期外れの話題を取りあげるのはいもの話だが、「保育園落ちた日本死ね!!!問題はいまだに尾を引いているらしく、4月に入っても山田宏議員の「親の責任だ発言炎上ネタになっている。

少子化の真の原因は「家業」でなくなったから

しかしそもそも根本問題として、なぜ少子化が進行し、なぜ保育園必要なのか?

女性子供が産まなくなり、産んでも保育園に預ける必要が生じた理由を問われれば、多くの人は「世の中の価値観が変化したからだ」と答えるだろう。ここまでは中学生でも想像できるレベルの話だ。では、なぜ世の中の価値観が変化したのか?

ここで「悪い左翼フェミニズム女性社会進出を唱えたり、日本国憲法家族の絆より個人主義を広めたせいだ」としか答えられない人間は、永久事態を解決できない。

左翼フェミニズムなんざ明治時代平塚らいてう時代からあるわい! じゃあなんで明治時代から昭和40年代まで少子化が起きなかったのか? 戦後日本国憲法採用していない日本以外のヨーロッパ先進国台湾韓国シンガポールアジア新興国でも少子化が進行したのか? 説明してみろや。

少子化の真の原因は産業構造の変化である

第三次産業従事者の増加と反比例して少子化は進行してきた。

http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5240.html

http://osan-kojo.com/osan/image/osannodata02_01.gif

昭和30年代までの日本の大多数の世帯は、農業漁業ないし個人商店などの「家業従事者であり、自宅やすぐ側にある農地がそのまま仕事場となる職住一体の環境生活していた。そして、農家個人商店では、一家のお母さんも育児だけにかまけず働くことが珍しくなかった。「専業主婦日本の伝統」なんて大ウソである!!

ただし、家業時代、働くお母さんに"出勤"の必要はなかった。農家には定時の出勤時間も決まった昼休み時間もないから仕事の合間を見て家事育児は可能だった。個人商店だって店番をしながら合間を見て家事はできる。

わたしの旧友(お子さんのいる女性)の祖母は、「昔の農家じゃ籠に赤ちゃん入れて畑に連れて行って、横に置いたまま仕事してたものさ」と語っていたという。

また、かような職住一体の家業環境は代々継がれてきたものから祖父母がいる3世代同居が普通に成立していて、家事育児祖父母に助けてもらうこともできた。

それが崩れたのは、1960年代日本高度経済成長を迎え、サラリーマン世帯化が進行して以降だ。多くの勤労者は都会の会社に勤務するため都会の通勤圏にある新たな住宅に住むようになったことで、職住分離が起きる。しかし、祖父母の世代は住み慣れた田舎に残りたがるものから結果的核家族化が進行した。

それでもバブル時代までは亭主の稼ぎだけで子供が養えたが、社会高学歴化とともに学費を含めた子供養育費は高騰し、今や共働き必要事態となっている。

左翼フェミニズムには功も罪もない

女性社会進出諸悪の根源」という保守論客の言説がおかしいのは、先にも触れたとおり、そもそも昭和30年代以前には農家個人商店のお母さんだってみんな働いていた点をきれいさっぱり捨象している点である

逆に言えば「女性もばりばりと学歴をつけて仕事キャリアを積むべき」という左翼フェミニズムは、日本においては社会に害毒を与えるほどの存在にすらなっていないと断言して良い。

女性叩きがお好きな保守主義者は「今の若い女は個人主義で贅沢で結婚して子供を産まないからケシカラン」と言いたがる。だが、これを左翼フェミニズムのせいにするのは無理がある。

ためしに渋谷原宿路上で「結婚相手年収が最低でもXXX万円以上」とか言ってるギャル1000人に「上野千鶴子を愛読してますか?」と聞いてみろ? 1人残らず上野名前さえ知らんぞ! 1万円ぐらい賭けてもいいw

「今の若い女は個人主義で贅沢で結婚して子供を産まなくなった」のは、左翼フェミニズムのせいではない! 日本が豊かになった結果、みんなが贅沢の味を知ったからだ。そして、それを招いたのは戦後自民党の推し進めた高度経済成長政策である。アフリカの最貧国ならばいまでも子だくさんではないか。

くり返すが、左翼フェミニズムなど平塚らいてう時代から存在した。しかし、イデオロギーけがあっても、それを実現できる社会環境がなければ空理空論なのだ高学歴女性社会進出が本格的に実現したのはやっと1980年代の話である

むしろ、日本において女性社会進出を説く左翼フェミニズムは、自民党が成し遂げた高度経済成長による産業構造の変化に後づけで乗ったに過ぎない。

社会が豊かになれば教育が普及し、教育が普及すれば個人主義が進み、少子化が起きる」これは日本に限らずあらゆる国に見られる現象だ。実際、エマニュエル・トッドは、2011年アラブの春以前から中東北アフリカ諸国識字率の向上とともに少子化が進展していた事実に着目していた。

精神論少子化対策を説く愚

それでも、少子化は「日本国憲法家族の絆より個人主義を広めたせいだ」と信じたがっている老害は、憲法改正すれば事態改善すると思っている。阿呆か。

じゃあ子だくさんが普通だった戦前農村人間は、一人残らず大日本帝国憲法の条文を意識しながら生活してたというのか?

前にも書いたが、小学校卒が大多数だった明治から戦前日本庶民憲法の条文を頭にたたき込んで生きていたなどありえんだろwww

仮に戦前の方が道徳的だったとしても、それは憲法の条文なんて国の中央が定めた大上段なものによってではなく、農村社会での地縁血縁共同体による信頼関係相互監視などに支えられていたはずだ。そして、こうした農村社会共同体を、ずばり自民党による戦後高度経済成長による産業構造の変化が解体したのである

そこで精神論だけ昔の物を再び持ち出したって、通用するわけがない。

日本以外で少子化が深刻な国と言えば、同じく儒教文化圏台湾韓国シンガポール、そしてカトリック圏のイタリアスペインである。いずれも共通するのは、産業構造は変化したのに大家族を良しとする伝統価値観だけ存続している点だ。

一方、先進国でも早い段階で社会価値観が脱宗教化(世俗化)を果たし、個人主義が進んだフランスオランダデンマークなどは、シングルマザー支援共働き支援など産業構造の変化に対応した政策が功を奏して出生率回復成功している。

少子化価値観の変化の問題から精神論で解決できるなどと考えるのは愚の極みだ。それでも精神論を唱えるバカが絶えないのは精神論にはお金がかからないからだろう。

ぼくのかんがえたさいきょうの少子化対策

以上を踏まえて、わたしが考える有効性の高い少子化対策は「家業」の復活である

少子化の発生以前は職住一体が当然であり、職住分離が家事育児の困難の元凶だ。したがって、自宅で家事育児をしながら仕事のできる環境を推進すればよいのだ。

からわたし育児仕事の両立のため、日本大企業に対し、在宅勤務の大々的導入を提案する。

現実問題として、現代ホワイトカラー業務はこれだけIT化が進んでいるのだから顧客取引先と直接接する営業販売部署以外なら、会社に出勤するのは週に一度のミーティングや報告を行う曜日のみで問題なく回るのではないか?

かつてわたしが勤め人をしていた最後の時期(2001〜04年)の仕事は、WEBデザイン顧客データベース構築、会計管理などであったが、1日の勤務時間中、職場上司に直接に顔を突き合わせて話をする必要はほとんどなかった。

在宅勤務者ならば、仕事の提出納期さえ守れれば、勤務時間をいつ捻出するかは自由だ。赤子を横に寝かせたまま書類作成だってできる。いや、昭和30年代までの農家個人商店はみんなそうしてきた(つけ加えれば、わたしの幼児期には母も自宅で簡単な時計部品作りの「内職」をしていた。1970年代にはそんな仕事もあったのだ)。

先日『週刊新潮』に掲載された夏樹静子の追悼記事によれば、彼女出産直後、毎日赤子が昼寝する2時間執筆にあてて小説を書いていたそうである作家という自宅で仕事ができる身分ゆえの育児仕事の両立だ。

在宅勤務には仕事上の情報漏洩というセキュリティ問題もあるが、そこは会社オフィスに一人一台のPCを置いたものと同じ感覚で、各人に仕事専用PCを貸与すればよい。

また、みずから「自宅勤務だとだらけてしまう」と言う人間がたまにいるが、そういう人間は逆に考えるべきである自分は自宅が仕事場個人事業主で、会社から仕事を請け負っているのだと。少なくともわたしは、そういう認識11年間フリーランスを続けてきた。

――どうですか? 経団連の皆さん(←絶対に俺のブログなんか読んでない)